2015 Fiscal Year Research-status Report
先住民運動にみる主体性の回復:ハワイ人の主権運動と文化活動についての人類学的研究
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15K03069
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
井上 昭洋 天理大学, 国際学部, 准教授 (20271702)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 先住民 / ハワイ人 / 主権 / 政治運動 / 文化活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年4月24日に「世界の言語『ハワイ語』」と題して天理大学言語教育センター主催の講演を行い、6月20日に「“先住民”の誕生:先住ハワイ人の事例を中心に」と題して天理大学国際学部主催の公開講座を行った。何れの発表もこれまでのハワイ研究の蓄積を整理し、今後の研究の方向性を確認するものであった。 2015年8月5日より20日にかけて、ハワイ州のオアフ島、ハワイ島、マウイ島で現地調査を行った。オアフ島とマウイ島では「イースト・マウイ・タロ・フェスティバル」の関係者への聴き取り調査を行い、ハワイ島ではマウナ・ケア山でTMT(30メートル天体望遠鏡)建設反対の抗議活動を行うハワイ人活動家に面談した。また、8月9日にホノルル市ワイキキで行われた「アロハ・アイナ・ユニティ・マーチ」の参与観察を行った。さらに、ハワイ先住民局(OHA)の事務所を訪ね、ハワイ人の自治体設立に向けての動きについて聴き取り調査を行った。以上の調査により、ハワイ人の政治運動と文化活動の現状を把握することができた。 2016年3月19日、日本オセアニア学会第33回大会において「先住ハワイ人『主権』運動の現在:アロハ・アイナ・ユニティ・マーチを通して考える」と題して研究発表を行った。8月の調査で得た情報に基づき、ハワイ人の政治運動の現在の状況をデモ行進の参与観察を通して分析した。 研究初年度ということもあり、学術論文という形で研究の成果を上げることはできなかったが、現在のハワイ人の政治と文化の両面における活動や状況の分析に向けて、基礎的な情報を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
4月末に行われる「イースト・マウイ・タロ・フェスティバル」の参与観察調査は、その時期が年度初めのため、また観光シーズンのために航空券の手配を行うことができず実施できなかった。また、8月の現地調査で予定していたハワイ島の「ホオクイカヒ・エスタブリッシュメント・デー・ハワイアン・カルチュラル・フェスティバル」が、フェステバル数日前のブッシュファイヤー(山火事)と悪天候のため中止となり、参与観察ができなかった。加えて、同フェスティバルの関係者の情報を入手するには、フェステバルの現場で直接にコンタクトを取るしかなく、インフォーマントとの接触が全くできなかった。 OHA(ハワイ先住民局)によるハワイ人自治体設立に向けてのキャンペーンを詳細にフォローするのが今年度の目的の一つであったが、ハワイ人社会内からの反対や訴訟問題から2015年中に開催される予定であった代表者会議が開かれず、キャンペーン自体が暗礁に乗り上げてしまい、その動向を追うことができなかった。OHAは、同キャンペーンの運営を外郭の委員会に委ね、その委員会が引き継ぐ形で代表者会議を開催しようとしたが、これも内外の反対に遭い予定通りに会議を開くことができないでいる。これらの混迷した状況については、ネット上で情報の収集に努めているが、依然として先行きは不透明である。以上の理由により、当初の予定より進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の二つの文化フェスティバルの調査は平成28年度に参与観察を行い、基本的な資料、映像データ、インタビュー・データの収集に努めたい。また、関係者への聴き取り調査を進めて、現場の生の情報を収集する。 OHA主導のハワイ人自治体設立に向けての動きは、先のキャンペーンが頓挫した後、OHAとは別個に新たな委員会が立ち上げられ、選挙によって選出された代表者による会議の開催が計画されたが、その新たなキャンペーンも同様にハワイ人社会内外の反発を受け、暗礁に乗り上げている。自治体設立に向けての動向はこの先どのように進んでいくか予想できないが、このような混迷した状況自体を研究対象とし、インターネット上での情報の収集や関係者への聴き取り調査などを進めて行きたい。 進捗状況の遅れにより、今後綿密なインタビュー調査によるデータ収集が困難であると判断した場合、メールやSNSによる関係者からの情報収集や関連ホームページ上の情報収集によって、データの不足を補うことも考えている。
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Research Products
(2 results)