2016 Fiscal Year Research-status Report
先住民運動にみる主体性の回復:ハワイ人の主権運動と文化活動についての人類学的研究
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15K03069
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
井上 昭洋 天理大学, 国際学部, 教授 (20271702)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 先住民 / ハワイ人 / 主権 / 政治運動 / 文化フェスティバル |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年4月27日から5月6日にかけて、ハワイ州のオアフ島とマウイ島にて現地調査を行った。ホノルルのハワイ先住民局では各種発行資料を入手し、ハワイ専門書店で日本では入手困難な書籍を購入した。4月30日にマウイ島ハナで開催された「イースト・マウイ・タロ・フェスティバル」を参与観察し、関係者から直接的に情報を収集した。また、5月1日にフェスティバルの一部として行われたカハヌ・ガーデン・ツアーでは、ハワイ最大のヘイアウ(古代寺院)であるピイラニハレを視察し、公園内の栽培植物の写真記録を取った。 5月18日から22日にかけて、グアムで開催された太平洋歴史学協会の第22回研究大会"MO'NA:Our Pasts Before Us"に参加し、20日の分科会"Reflections on Nationalism(s) in Oceania: Global Influences and Indigenous Perspectives"で"Imagined Sovereignty: A Historical Study of the Hawaiian Political Movement"と題して発表を行った。また、本研究のテーマに関連する幾つかの興味深い分科会に参加し、最新情報の収集に努めた。 8月9日から18日にかけて、ハワイ州のハワイ島にて現地調査を行った。同島に点在する各種博物館(イミロア天文学センター、キラウエア・ジャガー博物館など)において先住ハワイ人やその文化がどのように展示されているか視察した。また、プウコホラ・ヘイアウで13日と14日に開催された「ホオクイカヒ・エスタブリッシュメント・デー・ハワイアン・カルチュラル・フェスティバル」の参与観察を行い、現地のビジター・センターで日本では入手困難なDVD資料や関連書籍を購入した。更に、フェスティバルに先駆けて行われる、13日の午前6時から8時にかけてのホオクプの儀式を参与観察し、その映像記録を取った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、政治活動や文化活動に携わるハワイ人へのインタビューを中心に調査を展開しようとしていたが、短期の現地調査ではこの手法には限界があることが判明し、調査方法の転換を迫られたのが第一の理由である。文化フェスティバルやハワイ文化関連の博物館については、視察や参与観察による情報収集は進んでいる。しかし、政治活動の主な対象であったハワイ先住民局による自治体設立キャンペーン自体が雲散霧消してしまい、(政治活動の領域における)調査対象を変更することを強いられている。このことも調査の進捗状況に影響を及ぼしている。
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Strategy for Future Research Activity |
文化活動の領域においては、調査対象であったマウイ島の「イースト・マウイ・タロ・フェスティバル」とハワイ島の「ホオクイカヒ・エスタブリッシュメント・デー・ハワイアン・カルチュラル・フェスティバル」の二つの文化フェスティバルについて、参与観察や現地での関係資料の入手により、基本的な情報を入手することができている。今後は、米国本土の類似のハワイ文化フェステバルなどについても調査を実施し、ハワイ人の文化フェスティバルについて多角的な視点から厚みのある分析を行いたいと考えている。 政治運動の領域においては、当初の調査対象であった自治体設立キャンペーンについては、ハワイ先住民局のホームページなど、ネット上での情報収集に努める。加えてマウナケア山やハレアカラー山の聖地保護運動の情報を収集することにより、現在の先住ハワイ人がおかれている政治的状況について総体的に捉えていく方向で調査および分析を進めて行きたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は1万円弱であり、ほぼ予定通り予算を消化していると考える。当初の予定ほど人件費や謝金を消化することができなかったのが主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は1万円弱である。翌年度分で不足するかもしれない物品費などに充当する計画である。
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