2017 Fiscal Year Research-status Report
ローカル商品をめぐる多元的な語り―博物館学芸員による市民参加型の民俗学的研究
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15K03072
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Research Institution | The Niigata Prefectural Museum Of History |
Principal Investigator |
大楽 和正 新潟県立歴史博物館, その他部局等, 研究員 (20526959)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 博物館 / 市民参加 / 年中行事 / スーパーマーケット / ローカル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度も、新潟県内のお盆の行事食として利用される海藻のエゴを中心に追跡調査を進めた。前年度までの店頭の観察調査において、新潟県内では長野県茅野市の問屋が卸すエゴ草が流通している実態を把握。そこで今年度は茅野市内のエゴ草卸売業への聞き取り調査を行い、その動向の把握に努めた。茅野市は古くから寒天の産地として知られ、その原料となるテン草の配合藻として日本海沿岸のエゴ草が利用されていた。しかし、昭和30年代以降のエゴ草の高騰によって、エゴ草を寒天の配合藻として利用せずに、エゴ食文化が卓越する地域に乾物として直接販売するしくみが形成されていった。ある長野県の卸売業者は各地のエゴ食の有無や嗜好を熟知しており、地域の食文化やニーズに合わせてエゴ草を加工して出荷している状況が明らかとなった。特定の商品がローカルに流通し、ローカルに消費されていく現象は、地域を越えた多様なアクターが関わるかたちで展開している状況を理解することができた。 企業の中にはローカル食品を地域の伝統食として保存しようとする運動もある。その動向を把握するため、エゴやコンニャクなどの食品製造業者が組織する「越後えご保存会」の活動に参加し、調査を進めた。当会は見学会や料理教室、PRイベントなど幅広い事業に取り組んでおり、当会の動向については今後も継続して調査を進める計画である。 また、本研究では博物館を核とした市民参加型の調査研究の成果を社会に発信する手法についても検討課題として掲げている。研究代表者が所属する博物館の友の会メンバー企画講座としてエゴ作り体験や各地のエゴを試食するワークショップを平成29年11月に開催した。当日は友の会会員が調べたエゴの歴史に関するパネル展示コーナーを設け、市民参加型の調査研究成果の一部を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ローカル商品にかかわる卸売業や、食文化を保存する地域活動についても調査を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ローカル商品に関するチラシの収集分析及び現地調査を進めるとともに、市民参加型の研究成果の公開に向けて準備を進める予定である。
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Causes of Carryover |
ローカル商品に関するチラシ収集分析及び現地調査と、市民参加型の研究成果この公開を平成30年度に行うこととし、未使用額はその経費にあてる計画である。
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