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2015 Fiscal Year Research-status Report

現代アメリカの法源・法過程・法思考――制定法解釈論とコモンローをめぐって

Research Project

Project/Area Number 15K03073
Research InstitutionHokkaido University

Principal Investigator

会澤 恒  北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (70322782)

Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) 椎名 智彦  青森中央学院大学, 経営法学部, 准教授 (00438441)
Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywordsアメリカ法 / 法過程 / 判例法 / 先例拘束性 / 政策形成 / 司法審査
Outline of Annual Research Achievements

1 本年度は制定法解釈論及びコモンローをめぐる議論状況の整理を行い、特に両者の交錯する制定法解釈に関する判例の変更をめぐる事例に焦点を当てた。この状況では、仮に先例に誤りが含まれるとしてもこれを修正するのは第一義的には議会の役割であるとして、憲法判例やコモンロー上の判例に比して強い先例拘束性があり、判例変更のためには特別の正当化が必要である、とされる。理論面についても、Stephen G. Breyer、William N. Eskridge, Jr.等の所説を渉猟し、現代アメリカにおける法過程の動態性を適切に把握するための問題フレームの描出を試みた。この動態性は、特定の法的争点に関して、合衆国の政治部門が尽くした熟議(世論のインプットを含む)の質・程度に連動させる形で、裁判所が司法審査の態度を意図的に変化させるという手法において、最も典型的に表れる。
2 また、水平的連邦制の下で同様の論点について諸州がルールを採択するにあたり、法形成フォーラムの違いがルールの内容に偏りをもたらしていることを見出したのは収穫であった。例えば、事故が発生した際の被害者側の過失の取扱について、20世紀の後半、被害者は賠償を得られないとされる従前の寄与過失ルールから、日本の過失相殺に近い比較過失ルールへとほぼ全ての州が移行した。しかしその際には、純粋系の(我が国のものとほぼ等しい)ルールに移行する場合もあるが、そうではなく、被害者側の過失が加害者側のそれを上回る場合には一切賠償を比定するという、寄与過失型の要素を残したルールが採用されることもある。そして、判例法によって法変更された場合は前者が採用される傾向が強いのに対し、議会による変更の場合には後者が採用されがちである。これは、法形成フォーラムとしての司法部は、より理論的に一貫した態度を維持することが可能であることを示す。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

1 判例の法源性の中核的要素を構成する先例拘束性の問題について関心を有する国内研究者を囲み、会澤・椎名とともに意見を交換する機会を持った。さらに、この点については直近でも新たな判例が出てきており、公刊するには到らなかったものの検討を加え理論化に向けたデータの補強ができた。
2 会澤・椎名それぞれが、小規模ではあるが多様な専門分野と問題関心を有するメンバーからなる研究会等において試論的な報告を行った上でフィードバックを得ることができた。このうち会澤は、不法行為法の立法論に関心を持つ民法研究者等からなる研究会において、米国の不法行為法の変動における議会と判例法のそれぞれのアプローチについて議論した(会沢恒「米国〈不法行為改革〉の見取り図――民事法をめぐる政治運動――」不法行為法研究会(於早稲田大学))。これを通じて、法形成の態様と、そのアウトプットとしての法ルールとの間の連関について理解を深めた。また椎名は、米国法制史・経済法の大家であるHovenkampの近著の書評を行い、20世紀前半における法思想の転回と経済学・経済思想の関連性について検討を加えている(椎名智彦「[著書紹介]Herbert Hovenkamp、 The Opening of American law: Neoclassical Legal Thought 1870-1970」第184回早稲田大学アメリカ法判例研究会)。
3 さらに会澤は、合衆国最高裁の判例動向を整理するプロジェクトに参加し、特に直近の裁判官の交替がもたらす判例法の変遷について検討を加えている(次年度に公刊予定)。裁判官の個性と判例法との関連は当初の研究計画には盛り込んでいなかったが密接に関連する論点であり、検討の視角を広げることができた。

Strategy for Future Research Activity

第一に、本年度も前年度に引き続き(A)制定法解釈論及び(B)コモンローという実定法レベルでの議論についても検討を継続するが、国内のみならず英米の研究者との意見交換の機会を持ち、ネイティブの法律家の実感に即した理論構築を目指す(会澤、椎名)。
この点、会澤が以前より研究上の協力態勢を維持しているCatherine M. Sharkey教授(ニューヨーク大学)は、コモンローの主要領域である不法行為法と、制定法のコントロールする代表的な分野である行政法とに跨がる研究を展開しており、アドバイザーとして最適任であると言える。また、椎名がコンタクトを有しているTamanaha教授(ワシントン大学)は前記の通り本研究とも関連する問題系につき積極的に発言している研究者であり、改めて意見交換の機会を持つことで、知見を深める。これまでの研究上のコネクションに共同研究者が加わることで、従来見落としていた視角からの意見交換ができるものと期待できる。
第二に、検討の重点を(C)デモクラシーと政策論と法理論との関係の構造の解明に移してゆく。法システムのデモクラシー基底性と政治システムに還元されない自律性との緊張関係を理論的に検討しながら、これまでの実定法レベルの検討との摺り合わせを行う。この点については、近時、法哲学研究者を中心に立法学研究として議論が蓄積されつつある。椎名が従前より研究上の協力体制を有している松尾陽准教授(名古屋大学)といった、この分野に関心を有する若手・中堅研究者と意見交換の機会を持ち、規範論としての精度を高める(椎名、会澤)。

Causes of Carryover

パーソナル・コンピュータを購入する予定であったところ、年度末までに納品される目処が立たなかったため、発注を取り止めたため、115,338円の残額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

2016年度の早い時期に改めてパーソナル・コンピュータを発注し、納品の予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results) (of which Invited: 1 results)

  • [Journal Article] フラー解釈の新局面 : 法システムを支える人間像2015

    • Author(s)
      椎名智彦
    • Journal Title

      法哲学年報2014 立法の法哲学:立法学の再定位

      Volume: ―― Pages: 194―205

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] [著書紹介] Herbert Hovenkamp, The Opening of American Law: Neoclassical Legal Thought 1870-1970 (New York: Oxford University Press, 2015)2015

    • Author(s)
      椎名智彦
    • Organizer
      第184回早稲田大学アメリカ法判例研究会
    • Place of Presentation
      早稲田大学(東京都新宿区)
    • Year and Date
      2015-12-26
    • Invited

URL: 

Published: 2017-01-06  

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