2016 Fiscal Year Research-status Report
裁判・弁護士利用率の変遷の規定要因(国内各地の比較研究を中心に)
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15K03080
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
馬場 健一 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30238224)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 沖縄 / 司法 / 米国統治 / 施政権変換 / 民事裁判 / 民事調停 / 司法書士 / 弁護士 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、国内各地の人口あたりの訴訟利用率や弁護士利用率の通時的変遷、特に顕著な特徴を持つ返還後の沖縄とその他の地域との差異を実証的に比較検討することを通じて、日本の紛争処理のありように新しい光を当てようと試みるものである。 現在までのところ,戦後の各地のデータの収集と分析はほぼ終えており,沖縄についても,戦後のアメリカ占領期の訴訟利用の司法統計も合わせて,ほぼ収集を終え,分析と本土との比較に入った。その他各種の関連文献などの収集も順調に進めている。なお占領期の沖縄の司法統計の分析を進めた。また沖縄の現地訪問も重ねて行っており,現地に詳しい弁護士と引き続き連絡を取り,沖縄各地の実情をお教えいただき,いくつか現地訪問も行った。さらに沖縄司法書士会や那覇地検,沖縄刑務所や沖縄少年院の訪問調査も行った。 昨年5月の日本法社会学会学術大会にて「司法制度利用率の地域別比較研究の示唆するものー沖縄の経験は何を教えるかー」と題して報告を行った他,学会誌『法社会学』に査読審査の上,「訴訟率の地域差とその規定要因についてー多元的説明の試みー」との論考が掲載された。また今後は今年5月の日本法社会学会学術大会にて「司法制度改革が訴訟代理にもたらしたものー司法統計からの考察ー」との個別報告を行う予定の他,『宮澤節生古希記念論文集』(信山社2017年)において,「司法制度利用率の地域研究の示唆するものー沖縄の経験から法と社会を考えるー」との論考が掲載予定である。 このように,現在までのところ,研究実施計画に照らして順調に進んでいる。沖縄の,また全国の各地域の,訴訟利用や司法制度利用のありようについて,新規のまた理論的にも注目すべき研究成果が蓄積されつつある。最終年である今年は,これらの知見をさらに包括的な視点からまとめるとと共に,今後に展開されるべき新しい領域を開拓していくことが課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」に示したとおり,データ・文献の収集,現地訪問調査,データの分析や理論化の検討など,全て順調に進んでおり,今後の研究の進展方向もほぼ問題なく展望されており,良好な進捗状況であると評価されているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査で明らかになった,全国一活発な司法書士の法廷代理のありようを分析し,全国各地の同種データと比較するとともに,やはり同様に活発だった民事調停利用のあり方についても分析と比較をすすめる。それについて今年の日本法社会学会学術大会において個別報告を行い,そこでの批判や意見交換をもとに,さらに検討を進め,原稿としてまとめ査読審査に書けた上で,学会誌掲載を狙う。 また現地調査をひき続き行い,まだ調査を行っていない宮古,八重山など先島地域の司法や法律家のありかたについてデータを収集し,これまでのデータと合わせてさらに分析を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
書籍・物品等の価格が事前予想とわずかに異なっていたため,また,予算を超えることを回避するため慎重に使ったため,残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額であるので,書籍・物品等の購入にあてることとしたい。
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