2017 Fiscal Year Research-status Report
一般意思を抽出し正義にかなった法を定めるための民主的立法過程に関する歴史的研究
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15K03084
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
波多野 敏 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (70218486)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法制史 / 西洋法制史 / フランス法制史 / フランス革命 / 一般意思 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、昨年度に引き続きルソーの「一般意思」の観念と、その革命期への影響、さらには革命期の選挙制度の検討を進めた。 特に、今年度はルソーの「一般意思」観念の概要と、革命期の選挙制度の背景にあるコンドルセやシェイエース、ロベスピエールなど当時の政治家たちの考え方について検討したほか、こうした理論レベルの考察に加えて、91年、93年、95年の憲法の規定を中心に、選挙制度、特に選挙権が認められるのは誰かという点を中心として検討を加えた。また、革命期には議会の代議員を選ぶだけでなく、裁判官や聖職者なども公選制と成っているが、こうした選挙制度についても一部検討を加え、これと関連して8月末にフランス国立文書館で、革命期のマニュスクリプトについての調査を行うことができた。 こうした規定や選挙の実態についての検討はさらに今後の課題であるが、とりあえず現時点では、革命期の選挙制度についての基本的な考え方としては、1789-91年段階の「制限選挙制」と93年の成人男子についての「普通選挙制」との間の違いは、それほど大きなものではなく、91年憲法も93年憲法もできるだけ広い範囲の者に選挙権を認めるようという考え方が共通してその基礎にあると考えることができるという見通しを得た。 今年度は、昨年度までの研究成果と合わせて、本研究の成果の一部を、9月の法制史学会の秋季シンポジウム「国家と自由の問題」において「フランス革命期における『一般意思の表明としての法律』と『自由』」の中に取り入れて報告を行った。このシンンポジウムの記録は『名城法学』に「シンポジウム記録 国家と自由の空間』として発表されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年までで「一般意思」の観念の概要についての検討については、おおむね予定通り進展した。今年度は、「研究実績の概要」で述べたように、理論研究に加えて、憲法規定やさらには選挙の実態についての資料収集・検討も進めることができ、成果の一部を学会のシンポジウムで発表することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度として、革命期からボナパルトの統治下における選挙制度に関する立法について検討整理する。 次年度は、今年度までに行った理論的研究を基礎として、憲法上の規定など具体的な制度について検討を行い、また選挙の実態についても、昨年度までの収集資料に基づいて検討する。また、この点に関しては、さらに夏にフランスの地方の文書館で革命期の選挙について補足的な資料の調査収集を行った上で、検討を進めて研究をまとめていく予定である。 その上で、次年度は、最終年度でもあるので、選挙制度の背景にあった理論について、その成果を発表する予定であり、また具体的な選挙制度のあり方についても成果発表に向けて最終的な準備を進めて行く。
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Research Products
(2 results)