2018 Fiscal Year Annual Research Report
Historical Studies on Liberal-Democratic Legistration Process in French Revolution: Law as General Will
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15K03084
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
波多野 敏 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (70218486)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 法制史 / 西洋法制史 / フランス法制史 / フランス革命 / 一般意思 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度に引き続き、フランス革命期の選挙制度について憲法上の規定を検討し、また、夏にはコート・ドール県文書館で調査を行い、革命期の能動市民の名簿や選挙集会の議事録等を検討できた。 革命期の憲法に定められた選挙権に関連する規定について、従来は納税額による制限に注目されることが多かったが、これ以外にもさまざまな条件が設けられており、こうした規定について検討を行った。こうした諸規定では、「奉公人」に選挙権が認められていないことが多い。能動市民と受動市民の区別を廃止し、成人男子普通選挙制に道を開いたとされる1792年8月の法律でも、労働による自律という条件が残されている。納税額による制限は、単純に選挙権をブルジョアジーに限定するためのものというより、選挙権の基盤として他人に従属せず自らの意思によって判断できる能力が想定されていることがわかった。この点から見ると、自らの意思によって判断するための基盤として経済的にも自律していることが必要とされ、これが納税額による選挙権の制限ということにつながっていることがわかる。 革命期の選挙権をめぐる議論は、自律した判断のできる能力を持っていると考えられる「市民」とは誰かという問題をめぐって展開されており、1793年憲法で成人男子普通選挙制が定められたのも、「人」のうちだれが「市民」たりうるかという問題をめぐる議論の結果であった。これに対して、早くから制限選挙に反対したロベスピエールは、単純に「人」=「市民」と考えており、「人」のうちで誰が「市民」たりうるかという当時の議論の枠組みを共有していない。ロベスピエールの議論がほとんど顧みられなかったことも、この点から考えることができる。
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Research Products
(1 results)