2016 Fiscal Year Research-status Report
市民を対象とした重要度の高い民事関連用語の解説についての研究
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15K03087
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
大河原 眞美 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (40233051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西口 元 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授(任期付) (60708759)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民事重要法律用語 / 市民の理解度調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、選出した重要法律用語について市民を対象として行った認知面接調査を進めた。重要法律用語の選出にあたって、私人間の規定で重要な法概念を表す専門用語である「能力」「意思」「行為」「効果」を基本用語として、この4つの基本用語の関連語を16語選出した。16語は、「法律事実」「法律要件」「「法律効果」「権利能力」「意思能力」「行為能力」「「不動産」「動産」「債権」「意思表示」「法律行為」「不法行為」「債務不履行」「無効」「取消し」「撤回」である。これらの重要法律用語の調査結果について計量データ分析を行っている。 学会報告としては、①The 2nd Asian Regional Conference of Forensic Linguists、セント・トーマス大学(フィリピン)で、②Clarity 2016: an international association promoting plain legal languageでウェリントン市 (ニュージーランド)、③The Inaugural Asian Law & Society Association Conference、シンガポール国立大学での報告などがある。 調査としては、2017年3月に、ベトナム等の民法用語の比較法的研究を行った。日本の法整備支援を受けて民法等を制定したベトナム及びカンボジアを訪問し、国立ホーチミン市法科大学及び地元弁護士等の協力を得て,日本とベトナムとの間の市民の民法用語の理解の違い等を調査した。 学術論文としては、① Comparative Legilinguistics 、 ②『宮澤節生先生古希記念 現代日本の法過程 下巻』(信山社、2017年)などにおいて、分析の進捗の段階に応じた報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
民事重要法律用語16語について59名の被験者の面接調査のテキスト分析を行っている。16語についてのすべての自由発話を反訳してコンピュータに入力し、市民がどの用語についてどのような語を使って発話しているのかについて、KHコーダーを用いて計量データ分析している。 市民の自由発話の対応分析から16語の法律用語が私人間の規定の法概念と異なった3つに区分されていることが分かった。①「法律結果」「法律要件」「無効」「不法行為」「法律事実」「法律行為」「取消し」「撤回」「行為能力」「意思能力」「権利能力」「意思表示」のグループ、②「債権」「債務不履行」のグループ、③「不動産」「動産」のグループである。市民には重要な法概念の「能力」「意思」「行為」「効果」の区分がなく、身近な不動産売買の③グループ、同様に身近な借金の②グループ、後はその他の法律用語を全部まとめて①のグループに仕分けしていることがわかった。 共起ネットワークから、「法律」と「行為」が一緒に出現することが多いことがわかった。クラスター分析からも「法律」と「行為」が個体としての明確なまとまりを作っていることが明らかになった。 16語の法律用語についての自由回答で用いられた用語は、大まかに8つのクラスターに分かれている。①「法律」「行為」「法」等、②「確定」「取りやめる」「一度」、③「土地」「家」「財産」等、④「意味」「「思う」「効力」等、⑤「効果」「無い」「決まる」、⑥「能力」「権利」「出来る」「借金」、⑥「自分」「意思」「表す」等、⑦「意見」「言う」「決定」等、⑧「意見」「言う」「決定」等である。 対応分析、共起分析、クラスター分析をつき合わせて、市民の民事重要法律用語の認識を分析していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、KHコーダーを使った分析を完成させる。具体的には、分析対象ファイル内で抽出語がどのように用いられているかについて文脈を探ってコンコーダンス分析を行う。私人間の規定で重要な法概念を基にして、市民の重要法律用語に関する理解度を踏まえたストーリー性のある解説集を完成させる。 研究の進捗に応じた報告を国際学会等で報告する。①The 13th Biennial conference of the International Association of Forensic Linguists(2017年7月8~14日)、ポルト大学(ポルトガル)、②International Language and Law Association(2017年9月7~9日)、フライブルグ大学(ドイツ)、③Asian Law and Society Association(2017年12月15~16日)交通大学(台湾)である。①と②は採択され、③は申請予定である。 研究成果の公表として、解説集の印刷作成と国際シンポジウムの開催を行う。解説集については、『地域政策研究』(高崎経済大学地域政策学会発行)の第20巻第3号か第4号への登載予定である。 シンポジウムについては、平成29年12月2日(土)に高崎経済大学で開催する。オーストラリアの法曹資格を持つキャロル・ローソン氏(日本翻訳者協会法律翻訳分科会(JATLAW)運営委員会会長)が日本語・英語の法務翻訳からみた法律用語の特徴について報告する。大河原は、本研究の概要と解説集について報告する。西口は、ベトナムやカンボジアの民法用語の比較法研究の報告する。大橋鉄雄氏(フリーランス編集者(法情報))には法律専門誌編集者の視点から報告する。 解説集は、裁判所や弁護士会への送付、シンポジウムで参加者に配布する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額として27,486円生じた理由は、図書購入費が少なかったためである。大河原は研究打合せや研究会で東京出張の際に大学図書館で図書の貸し出しを受け、西口も高額図書については購入を控えて大学図書館を利用したことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の27,486円は、解説集の印刷経費にあてる。印刷については、大学紀要を利用するので経費を抑えることができるが、抜刷は50部のみである。成果の公表のためには多くの抜刷が必要なので、追加抜刷代にあてる。
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Research Products
(11 results)
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[Presentation] 日本の民法総則2017
Author(s)
西口元
Organizer
国立ホーチミン市法科大学
Place of Presentation
国立ホーチミン市法科大学(ベトナム)
Year and Date
2017-03-15
Int'l Joint Research
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