2015 Fiscal Year Research-status Report
フランス法における「契約締結と平等取扱い」:民法の憲法化の理論的解明
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15K03089
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
成嶋 隆 獨協大学, 法学部, 教授 (90115056)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小柳 春一郎 獨協大学, 法学部, 教授 (00153685)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 差別禁止 / 賃貸借 / 居住の権利 / 契約自由 / ソフト・ロー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,フランス法において,とりわけ紛争例がある不動産賃貸借契約の分野を中心にしながら,契約締結時に一方当事者が契約相手方の人種,宗教,年齢,外形的特徴などの理由に基づく契約拒絶を禁止する法理のあり方を解明するものである。 平成27年度では,国内法の解明及びフランスにおける現地調査を実施した。国内法については,周藤利一明海大学不動産学部教授(国土交通政策研究所所長等を経験した国土交通省OB)を研究協力者として加え,国内法の実態解明のために3回の研究会を開催し,問題状況の把握,日本における研究状況の確認,最近の日本法の展開を議論とした。 さらに,平成28年3月には,研究代表者である成嶋と小柳が共同して,フランスにおける実態調査を実施した。調査対象は,フランスの研究者(日本の状況について理解がある研究者およびフランス専門の研究者),フランスの社会団体,差別禁止国家機関である。本研究は,伝統的国家法分野だけでなく,独立行政機関や社会運動,業界団体規約などの非国家的規範(ソフト・ロー)をも含めた実態まで明らかにすることを目的としているが,その基礎を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に推移している」と判断する理由は,第1に,国内法について,3回の研究会を通じて,基本的な問題点を再確認できたのみならず,新たな法状況についても理解を深めたこと,第2に,フランスにおける調査を実施し,本研究の特色であるソフト・ローを含めた研究の手がかりを得たことである。 第1については,小柳春一郎(獨協大学法学部教授,研究分担者),茂木明奈(白鴎大学法学部専任講師,ゲストスピーカー),周藤利一(明海大学不動産学部教授,研究協力者)がメインスピーカーとなり,重要な報告を行った。一方で差別禁止法理が重要であるが,他方で賃貸人の賃借人選択の自由も重視されるべきであり,しかも,最近では,反社会的組織関連の賃借人については,都道府県条例による指導を通じて「不動産賃貸借契約における反社会的勢力排除のための条項」が設けられるようになっていることなども議論の対象になった。 第2については,フランスにおいて,SOS Racisme(反差別団体として著名),Defenseur des Droitsの差別問題担当者などにインタビューを行い,更に,マニュアル等の提示を受けるなどした。また,ナント大学教授,パリ建築大学校教授,パリ第一大学講師などを訪問し,最近のフランスにおける動向について情報提供を受けた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針は,一方では,国内法についての研究深化,他方では,フランスについての文献的検討の進捗である。 国内法については,日本における差別禁止のための団体及び不動産関連管理者団体へのインタビュー及びその取組みを明らかにすることが必要である。実際に,差別禁止に取り組んでいる社会組織がどのような困難をかかえているのか,それはフランスと共通かを明らかにする。 フランス法については,研究初年度の末にインタビュー等を通じて入手した大量の文献等を精査,検討し,フランスの反差別法理の実態を明らかにすることが必要である。また,フランス大学関係者と接触,連絡を深め,国際的な研究枠組みとして成果品を発表する準備を行う。
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Causes of Carryover |
次年度繰越しが生じた理由は、2016年3月において、成嶋(研究代表者)と小柳(研究分担者)が共同して、パリ及びナントに出張し、差別問題対応の政府機関であるDefenseur des Droitsや民間反差別活動団体として著名なSOSracisme、および大学所属研究者等(ナント大学教授等)とのインタビューを実施したが、その時期が3月下旬になったため、本年度予算で支出することが困難になったためである。翌年度予算から支出を行う。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように、2016年3月21日以降に実施したパリ及びナントへの出張のために、2016年度予算から支出を行った。繰越は、研究実施に関する実質的な変更を理由とするものではなく、予算支出時期に関連した形式的な理由であった。
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Research Products
(4 results)