日本中世の土地境界紛争における実検使の機能と紛争解決

2017 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K03090
• Research Institution: Hoshi University
• Principal Investigator: 山本 弘 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (80363307)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2019-03-31
• Keywords: 日本法制史 / 土地境界紛争 / 堺相論 / 実検使 / 紛争解決

Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は、中世の土地境界紛争における実検使（堺相論実検使）の実態及び機能の解明、ならびに実検使の視点を通じた土地境界紛争解決における紛争観念の考察である。
前近代における土地境界紛争では、裁判権力から派遣され現地調査をする実検使が登場する。とくに中世の実検使は、単なる現地調査だけではなく紛争そのものの解決に繋がる調整機能を有していたと考えられている。しかし、実検使の観点からの史料検討や、個別事例の横断的な研究はほとんどなされていない。本研究では、実検使の考察を通じて当該期の土地境界紛争に関する法観念を明らかにすることを主たる目的とし、副次的目的として現在的な課題である土地境界ＡＤＲ、現行裁判での経界確定訴訟および筆界特定制度へのフィードバックを目指している。
本研究では、意識的に研究スケジュールを３つのフェーズに分け、順次段階的に取り組んでいくとともに、上位フェーズで得られた成果を下位のフェーズに還元することによって、各位相を補完していく手法をとっている。その際、各年度を前期と後期に分け、それぞれの段階において研究の進展度を確認する。また、進度に応じ検討対象の精査を行う。
平成２９年度前期までに第Ⅰフェーズ「史資料における紛争研究」に一区切りを付け、平成２９年度後期からは本格的に第Ⅱフェーズ「研究者・実務家との意見交換」に取り組んでおり、隣接研究者や実務家との意見交換を実施している。また、並行して史資料の補完的収集、読解、検討を行っているものの、史資料の詳細な読み込み及び現地調査は不十分である。全体として、進捗状況がやや遅れ気味であるので、全体の総括となる平成３０年度は拙速になることなくこれまでの遅れを取り戻し、研究を深化させ公表することとしたい。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

昨年度同様、学事等により当初考えていたエフォート率が低下してしまっている。やや遅れ気味の進度であるので、研究以外の業務を効率化し、研究時間の確保につとめ、研究の遅れを取り戻したい。またその際は、拙速となることなく綿密な考察を心掛けたい。平成３０年度は、隣接領域の研究者・実務家との意見交換を通じて多角的視点を獲得しつつ、研究成果の報告等を通じて本研究を深化し、総括及び公表を行う予定である。

Strategy for Future Research Activity

平成３０年度前期は、継続して第Ⅱフェーズ「研究者・実務家との意見交換」に取り組みながら、並行して第Ⅲフェーズ「成果公表および総合的検討」に進み、これまでの成果についてまとめの作業に入る。また、成果をまとめるにあたって不充分な第Ⅰフェーズ及び第Ⅱフェーズの研究内容については、可能な限り補完していく。そして、平成３０年度後期は、最終的な総括を行い、本研究を公表する予定である。

Causes of Carryover

(当該助成金が生じた状況）
学事等の研究以外の業務について、初期の状況よりも時間を費やしてしまい、研究の進展に遅延をもたらした。物品購入に遅れが生じたため、当該助成金が発生してしまった。また、研究者及び実務家との意見交換を頻繁に行う予定であったが、こちらの予定及び先方の都合等により機会を逸してしまい実現できなかったことも一因である。
（翌年度分として請求した助成金と会わせたしよう計画）
物品購入計画を早期に進めるとともに、研究者及び実務家との意見交換についても計画的に実施していきたい。