2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03103
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
渡辺 康行 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (30192818)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 裁判官の市民的自由 / 司法に対する国民の信頼 / 立法事実論 / 要件事実論 / 事案の解明義務論 / 憲法訴訟論 / 法の下の平等 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度に単著を公刊したことにより、憲法上の権利に関する研究はかなりの進展をみた。そこで2019年度は、救済法の担い手である裁判官に焦点を当てた研究を主に行った。とりわけ、ツイッター上の表現を理由として分限裁判に付され、戒告処分を受けた岡口基一裁判官に関する事件を機縁として、過去に起こった寺西判事補および古川判事に関する分限裁判の事例を振り返りながら、「裁判官の市民的自由」と「司法に対する国民の信頼」の調整をいかに図るかについて考察した。岡口裁判官をめぐっては、現在も第二次の分限裁判と、裁判官訴追委員会による調査という現在進行中の重要な問題が生じているため、これからも注視する必要がある。 また憲法訴訟と要件事実論との関係という、これまで全く未開拓な分野についても、萌芽的なものとはいえ、論究する機会を得た。従来の憲法学において立法事実論として論じられてきたことと、民事訴訟法学などで扱われてきた要件事実論や事案の解明義務論との関係に関する研究は、法実務に根差した救済法を構想するために、今後発展させる必要性があるという見通しを得た。このことは、大きな収穫だった。 さらに、法の下の平等に関しても、従来行ってきた研究を幾分か深化させる機会を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はきわめて大きなものであるが、いろいろな角度から考察を進めることができている。ただし、本年度の後半に予定外の業務が発生した。そのことにより、本研究課題の研究期間を1年延長することを申請し、承認された。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、「研究実績の概要」欄で記載した研究を行うとともに、他の3名の研究者と共著の、憲法総論・統治に関する体系書の執筆に注力し、脱稿にまで至っている。研究代表者の分担部分は司法権・憲法訴訟などであるため、本研究課題と密接にかかわっている。2020年度は何度かの校正を経て、公刊に至る予定である。同書の公刊は、本研究課題の総括という意味をもつであろう。
|
Causes of Carryover |
本度後半に予定外の業務が急増したため、研究期間の1年延長を申請し、認められた。残額は16万円ほどであり、図書の購入などに充てる予定である。
|
Research Products
(5 results)