2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03107
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 一将 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (50334991)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生活困窮者 / 支援 / 行政法 / 交換 / hierarchy / network / 互酬 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度にあたる今年度においては、「平成27年度研究実施計画」記載の通り、連携研究者の協力を得て、生活困窮者支援ネットワークの理論と実務に関する情報収集に力を注いだ。情報収集活動の第一は、名古屋市における生活困窮者支援の取り組み状況を、この問題を調査している社会学者のインタビューを通じて、調査したものであった。第二は、「不良な生活環境の解消」などの名称で条例が制定されていることを知り、とくに大阪市および京都市の条例の情報を、関係者へのインタビューを通じて、収集したものであった。 上述の調査から得られた認識は、いずれのケースにおいても、目的の実現のためにふさわしい手段が構築されていないのではないか、という疑問である。生活困窮者支援制度は都市部における就労中心の支援となりがちであるが、これは地理的・人的な支援の多様性に応答できているのかが問われている。また不良な生活環境の解消を目指すとされる条例では、命令・代執行や即時強制という権力的活動が自治体行政に授権されている。しかし、不良な生活環境の定義や判断が、専門的・技術的に行われるのかどうかの疑問があるのみならず、連携研究者の一人である医学の専門的知見によれば、不良な生活環境にあるとされる者の状態は、即時強制等の権力的活動によって、悪化する可能性が危惧されるという。そうだとすれば、自治体行政には命令・代執行や即時強制といった権力的行政活動以外の活動が求められることとなる。これは、どのような活動であるのかが、次年度においては研究されることとなる。なお、連携研究者と行っている「これからの生と民主主義を考える会」のホームページには、本研究の成果の一部が示されている。https://sites.google.com/site/kangaeruseimin/recent-output
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね、「平成27年度研究実施計画」の通りに研究が進行したため。
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Strategy for Future Research Activity |
ひきつづき、連携研究者との意見交換を通じて、研究を推進する計画である。
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Research Products
(2 results)