2017 Fiscal Year Annual Research Report
research on practice of life support network and administrative law theory
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15K03107
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
稲葉 一将 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50334991)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ネットワーク / network / 新たな社会関係と国家行政 / 応答 / responsibility / 民主的公務員の再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に照らして、最終年度は、2年間の調査・分析と連携研究者との意見交換の結果得られた研究成果をまとめた。研究成果の一部が、名古屋大学法政論集277号31頁以下に掲載された「ネットワークに依存する国家行政と国家行政のネットワーク化」と題する論文であり、これは2018年3月に公表された。この要旨は以下の通りである。 第一に、多義的な「ネットワーク」の語を、「階層制と市場」のどちらでもないmode of exchangeの一つと理解する仮説から分析を始めた。このような理解をする他分野の研究成果を参照しつつ、この意味でのネットワークの性格を有する社会関係を「ネットワーク」と把握することで、行政改革以降に生まれた新たな社会関係の動態を分析できるのではないかと思われる。第二に、この意味でのネットワークは、「社会関係」レベルでの動態であるが、これと国家との「相互作用」が起きていることを、日本の「一億総活躍社会」や厚労省によるこれの具体化に即して述べた。第三に、ネットワークの性格を有する社会関係と相互作用する国家行政もネットワーク化するはずであるから、行政のネットワーク化の一つの展開を、米国の研究者であるロウブルの主張を参考にしながら論じつつ、一般的には、変動する社会関係に「応答」response可能な国家行政の条件として行政組織あるいは公務員の民主化が、もう一度課題となるのではないか、という問題を提起した。「市場化」によって行政の、公務員の解体が進行したのに対抗して、変動する社会関係への行政の応答可能性という視角からの、進歩的で発展的な問題としてこれを提起しようと試みたのである。 以上の論文は、まだ「覚書」の段階に過ぎない。欠点を指摘する批判に学びながら、日本内外において、ネットワーク論を実証する素材を集めて、この論議の有用性を分析することが、今後の研究課題である。
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Research Products
(2 results)