2016 Fiscal Year Research-status Report
「東アジアにおける『共和国』の意味ー韓国を中心に」
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15K03108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
國分 典子 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (40259312)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国民国家 / 共和 / 東アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、韓国が臨時政府時代の憲法以来用いている「共和国」という概念の歴史的発展過程および今日の共和国概念についての議論を機軸に、中国や日本の「共和国」についての理解がこれにどう関わっているか、また西洋の「共和国」概念が東アジアの国家思想のなかでどのように位置づけられるものであるのかを検討し、そこから東アジアにおける「国民国家」の意味を再考しようとするものである。 28年度は、20世紀初頭に日本の憲法学者、特に穂積八束と有賀長雄が日本および朝鮮や中華民国における国家思想形成に果たした役割を分析し、その一部を論文、Der Staatsbegriff der Staatsrechtslehre unter der Meiji-Verrfassung: HozumiYatsuka und Ariga Nagao, in Kazuhiro Takii/Michael Wachutka (Hrsg,), Staatsverstaendnis in Japan: Ideen und Wirklichkeit des japanischen Staates in der Moderne, Nomos 2016,133-155のなかで発表した。但し、有賀長雄が中華民国憲法案に与えた影響の分析については、同著のなかでは充分に掘り下げた検討ができておらず、いまだ分析中である。 また、当初の予定では、28年度は史的考察を中心に行う予定であったが、現地での史料収集の時間を充分にもつことができなかったため、予定を変更し、現代韓国の国民国家のあり方について、国家意思形成がどのようにして行われているかという視点からの研究を先に行った。その内容の一部は、韓国の憲法改正、および国会に関する論考の中で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究上の問題ではないが、27年度に引き続き、28年度も父の病気の世話とそれに続く両親の死去で、当初予定していた夏休みの史料調査を行う時間をとることができなかった。そのため、当初の予定とは異なり、現代的な問題についての分析を先に行い、歴史史料を用いた分析を次年度以降に延ばすこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度に行うことのできなかった資料調査は、29年の9月に行う予定である。同時に、有賀長雄の中華民国における憲法制定への関与に関し、早稲田大学の所蔵する資料の分析を進め、20世紀初頭の中韓の「共和国」概念と当時の中韓への日本の憲法学者の思想的影響の可能性を検討する。 北朝鮮の「共和国」概念および国民概念についても、29年度に着手する予定であるが、これについては、韓国法制研究院の柳智盛博士が北朝鮮関係資料の収集の援助を申し出てくれているので、同研究院を通じての史料へのアプローチを考えている。
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Causes of Carryover |
28年度に予定していた海外での史料調査を家庭の事情(両親の病気と死去)により、行うことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度まで果たすことができなかった海外での史料調査のための渡航費および史料取集に関わる経費として用いるほか、研究の遅れを回復するために、アルバイトを使って資料整理をするための人件費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)