2017 Fiscal Year Research-status Report
「東アジアにおける『共和国』の意味ー韓国を中心に」
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15K03108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
國分 典子 名古屋大学, 法政国際教育協力研究センター, 教授 (40259312)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 民主主義 / 共和国 / 韓国 / 朝鮮 / 臨時政府 / 植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1919年の臨時政府憲法制定以来、「民主共和国」を憲法に掲げてきた韓国の共和国概念を分析することを主たる目的としている。この点に関連して、2017年は、韓国で大統領弾劾というエポックメーキングな事件が起こった。弾劾の理由となったのは、崔順美ゲートといわれる大統領の友人の国政介入問題であったが、このことは韓国において、国家のありかた、民主主義のありかたを巡る大きな議論を呼び起こすことにもなった。このため、2017年度は若干、当初の予定とは異なるが、この弾劾事件が韓国において有する意味の分析を行うこととした。その一部は、論文「韓国における大統領弾劾審判とその基準」に成果として発表した。 また史的研究としては、日本の植民地支配下において、君主制から民主制への移行を表明し、大韓民国臨時政府が成立するまでの時期に起こったいくつかの臨時政府設立の動きを考察し、当時、臨時政府を設立しようとした各団体の国家構想がどのようなものであったかを分析した。さらに、臨時政府成立以降の臨時憲法の制定およびその後の同憲法改正に際してどのような統治機構上の変化があったかを分析し、当時の共和国概念がどのような国家観の下に作られたかを検討した。これらの成果は、論文「韓国臨時政府憲法文書における国家構想」にまとめた。 北朝鮮については、朝鮮民主主義人民共和国の建国初期の憲法関係資料を調査し、韓国法制研究院からいくつかの関連資料を入手した。特に建国初期の憲法の教科書を発見し、その中に示された国家観については、韓国法制研究院から出版された『分断前後南北憲法変遷史に関する研究―統治構造形成のための行政関係法令を中心に―』(韓国語)の中で紹介した。なお、同著においては、北朝鮮についてとともに、韓国の建国初期までの国家観についても紹介している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2016年度の遅れを十分に回復できていないために、全体としての研究計画はやや遅れている。また北朝鮮関係については、資料入手に努めているものの、一次資料の発見・入手が困難なのも、遅れの原因となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
現代的な観点についていえば、2017年度に分析した大統領弾劾問題に関連して、もう少し統治機構の側面から韓国人の国家観及び民主主義の理解を考えてみたいと思っている。その点で、特に憲法裁判所が民主主義との関連で果たす機能に注目したいと考えている。この点は当初の研究予定では考えていなかった点であるが、2017年度の研究の中で、大統領弾劾事件を分析する中で憲法裁判所が立憲主義的な観点のみならず民主主義の観点で果たす機能が韓国の今日的な「共和国」概念を支えているのではないかと考え、必要な分析課題と捉えるに至ったものである。 また北朝鮮関連については、今後、朝鮮法専門家のアドバイスを得て、資料発掘の方法を考える予定である。
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Causes of Carryover |
2016年度、家族の事情により長期の海外出張計画を立てられなかった分が昨年度にも影響し、全体として残余が生じた。この分については、2018、2019年度の出張および出張で自分で資料収集できない分のアルバイト雇用による資料収集の人件費とする予定である。
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