2018 Fiscal Year Research-status Report
「東アジアにおける『共和国』の意味ー韓国を中心に」
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15K03108
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
國分 典子 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40259312)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 議会 / 民主主義 / 共和国 / 憲法裁判 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、以下の3つの観点で研究を進めた。 第一に、臨時議政院の活動の分析を行った。臨時議政院は、植民地時代に韓国が臨時政府を作る過程で、作られた議会であり、この臨時議政院が臨時憲法を制定し、建国の時代につながる一定の国家理念、国家形態を策定している。しかし、臨時議政院についての分析は韓国においてもほとんど行われていない。韓国国会図書館が2019年の臨時議政院百周年に向けて資料整備をし始めていることから、同図書館を通じて資料を収集し、臨時議政院およびその国家理念の分析を行うとともに、これを同図書館主催の臨時議政院百周年記念セミナーで報告することとした(但し、報告は2019年4月)。 第二に、北朝鮮の国家概念および朴正煕時代の民主共和国概念についての資料を収集し、分析を行った。北朝鮮の国家理念に関しては、韓国法制研究院を通じて北朝鮮関係資料を収集し、北朝鮮の建国期の国家理念を分析するとともに、朴正煕時代の南北関係における政策転換が南北の共和国理念にどのような変化をもたらしているかについて考察を進めた。。 第三に、憲法裁判制度が建国後の韓国で果たしてきた機能を考察した。今日の韓国憲法裁判所は政党解散制度や弾劾制度を通じて、国民意思の確認という機能を持っている側面がある。このため、憲法裁判所の決定の中で国民意思がどのように論じられているかについての分析を行った。また民主化以前の憲法裁判制度において、違憲審査制度が民主主義との関係でどのように位置づけられていたのかを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は出版の遅れ等もあり、発表できた研究成果が少ないが、資料収集および分析面で当初予定していた研究の2017年度までの遅れは取り戻すことができた。特に、韓国の国会図書館、韓国法制研究院の協力で資料を集められたことによる進展が大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を単著にまとめる計画を詰め、以下のような形で今後、執筆を進めることを考えている(なお、これまでの資料収集で足りないものをさらに収集するために本年度の余剰金および次年度の予算を使う予定である)。 韓国の近代化過程では議会による話し合いという動きがひとつの特徴としてあった(万民共同会、大韓民国臨時議政院)。このような端緒となった万民共同会は当初は官僚中心の組織であったものが、次第に一般国民を巻き込んだ活動となってできたものであった。「万民共同会」という用語は現代でも市民集会が用いている。第1編2~3章では、このような討論による民主主義の韓国における歴史的発展とその特徴を考えることとしたい。 但し、韓国の民主主義においてもうひとつの論点となりうるのは、南北問題である。建国後の分断国家では民族的な統一は挫折し、反共政策がとられた。そのような中で国民概念は実体と理念が乖離し、また「民主共和国」も社会主義との対照では自由主義が重視されつつも、自由民主主義的な国家形成が独裁体制の下で制限された。このため、制憲期までの動きはその後の独裁体制の中で変形してゆく。第1編4~5章では、民主化以前の「民主共和国」がどのような実体をもち、それが今日の韓国の国会体制にどのように影響しているのかを法的観点から子考察する 民主化以降の時代との関係では、当初模索された討議的民主主義がどのような形態で韓国の統治構造の中で捉えられるかを考察したい。大統領が強い統治機構と考えられている韓国において、議会の果たす役割、そして近年の大統領弾劾にみられるような市民の動きとそれに対する憲法裁判所の役割を分析する(第2編1~3章)。現代の韓国において憲法裁判所への注目が高まり、憲法裁判所に民主主義を支える機能が期待されていることを指摘し、その功罪を考えるとともに、「民主共和国」の今日的意味を考える(第2編4章)。
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Causes of Carryover |
韓国滞在にかかる費用を一部他から支出することができたため、その分を次年度の資料収集に充てたいと考えている。
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Research Products
(3 results)