2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバル空間において多極的な法のネットワークが構成する公共調達の法
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15K03109
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
安田 理恵 名古屋大学, アジアサテライトキャンパス 学院(法), 特任助教 (60742418)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 公共調達 / 行政主体の多元化 / ネットワーク化 / 情報 / 基準適合性審査手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
今日の公共調達契約は、既存の研究が前提にした公私の区別の相対化、手段の多様化といった現代行政法現象だけではなく、新たに国境を超えた空間に展開するグローバル行政法現象、そして、公私を超える多様な主体が契約関係に登場する多極的行政法現象のなかにある。本研究は、公共調達契約について、このグローバル行政法および多極的行政法のなかに定位するものとして新たな位置づけを与え、新しい行政法理論を構築することを目的とする。 研究初年度である平成27年度は、公共調達契約が展開する空間として、まず日本国内に主たる焦点をあて、そこに登場する主体やルールの調査および整理、分析をおこなった。これにより、行政法理論上の課題を抽出し、従来の課題と新たな課題とを切り分け、今後の理論構築のための鍵概念と問題の核心を見出した。すなわち、情報の共有・加工と、それを可能にする異種混成手続(各公共的主体がそれぞれに装備している基準適合性審査手続を接合させた手続)である。 本研究の成果の一部は、論文として公表された。また、インドネシア・ガジャマダ大学が主催した国際シンポジウム、および、名古屋大学が主催した国際シンポジウムにおいて、本研究の成果の一部を報告し、国内外の研究者、実務家等との意見交換を重ねた。意見交換の結果、本研究が目的とする理論構築の試みは国内外において類例が少なく、グローバル化、行政の主体の多元化、および、情報のネットワーク化に伴う法問題を析出する研究として意義が大きいことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度の目標は、国内外の公共調達契約における規制および運用例の調査および分析であった。この計画を、国内の公共調達契約に限定することによって、行政法上の理論的課題をよりクリアに析出することができた。 具体的には以下のとおりである。モンゴルにおいて、モンゴル法律家協会が主催する行政法のワークショップに参加し、ウランバートル市控訴行政裁判所判事や国会議員、行政法研究者らとの情報交換および資料収集を行うことで、上記目標を達成した。また、モンゴルの法律家等とのネットワークが確立したことから、今後も継続的に実質的な意見交換が可能となるという成果を得た。インドネシアにおいては、汚職取締委員会のdirectorやvice chairman等との面談、当委員会で開催されたワークショップへの参加、ガジャマダ大学主催の国際シンポジウムにおける研究報告を通して、インドネシア、オーストラリア、タイ等の法律家等との意見交換および資料収集を行うことで、今年度の目標を達成した。さらに、名古屋大学主催の国際シンポジウムにおいても研究報告を行い、既述の国々の法律家の他、日本の法律家等はもとより、アメリカ、中国、台湾やアセアン事務局等々の法律家らとの意見交換を行ことで、今年度の目標を達成した。上記活動を通して、人的ネットワークが形成されるという成果を得た。今後は、これらのネットワークを生かした比較法研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、以下の課題に取り組む。第一に、各国の(とくにベトナム、中国等を対象として)公共調達契約の仕組みを調査、分析する。第二に、それぞれの国が国際的な取決めを、どのように国内法に接合させているかを調査、分析する。第三に、各国の公共調達をめぐる不正・汚職問題等の状況を調査、分析する。第四に、国内法や国際的取決めが汚職問題にどのように対応し、どのような方策を考案しようとしているかを調査、分析する。 具体的に以下のとおりである。 ①べトナム:ベトナム政府の公共調達契約に関して、上記課題に取り組むために、ハノイ法科大学に設置された名古屋大学日本法教育研究センター/アジアサテライトキャンパス学院を拠点として、行政法研究者であるLan Phun氏等と協働で、関係機関における資料収集および意見交換を実施する。 ②中国:中国政府の公共調達契約に関して、上記課題に取り組むために、中国政法大学応松年教授、全国人民代表大会法制工作委員会行政法室の田林氏、および、台湾司法院大法官陳臣民氏等の協力を得て、関係機関における資料収集および意見交換を実施する。 ③公共調達契約の比較法研究、公共調達契約における不正・腐敗問題の状況およびその防止策の分析・検討を行っている西側諸国の専門文献を渉猟し、複眼的な比較法研究へと結びつける。
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Causes of Carryover |
調査費が、見込みの額よりも安価で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の調査費に用いる。
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Research Products
(3 results)