2015 Fiscal Year Research-status Report
団体規制法と結社の自由:憲法原理を踏まえた体系構築に向けて
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15K03113
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 武史 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40432405)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 結社の自由 / 団体規制法 / 緊急事態法 / 団体規制法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の全体構想は、憲法上の結社の自由の観点から非営利団体に関する規範群を再編し、日本において、公法・私法の枠組みを超えた「結社法(非営利団体法)」という新たな法領域を開拓することである。その中で、本研究は、上記「結社法」構想の重要な一部を構成する「団体規制法」を取り上げて、その理論的分析と体系構築を試みる。 平成27年度は、(Ⅰ)存立規制制度、(Ⅱ)活動支援制度、(Ⅲ)公的規制措置(団体規制)からなる結社法体系のうち、(Ⅲ)を取り上げる予定で日仏の比較法研究を進めていた。そのような中、2015年11月13日のパリ同時多発テロ事件が発生し、それを受けて、従来の緊急事態法が改正され、新たに団体の強制解散制度が緊急措置として盛り込まれた。フランスではもともと1936年の戦闘団体禁止法および2006年のフーリガン禁止法によって行政による強制解散が認められていたが、改正緊急事態法ではさらに手続的要件が緩和された行政解散制度が認められることになった。この制度は緊急事態下で適用されていくつかの団体が解散され、それに対する行政訴訟が提起されている。また、改正緊急事態法での強制解散制度の合憲性が憲法院でも審査された。団体規制のうち最も厳しい措置である行政による強制解散は、緊急事態下での必要な措置であるとはいえ、結社の自由との間に強度の緊張関係をもたらす。そこで、年度の後半では、進行中の事案であるが、改正緊急事態法で導入された強制解散制度と結社の自由との関係を、具体的な裁判例を通じて検討する作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集と分析が順調に進んでいる。また、研究計画に該当する事例が比較法の対象であるフランスで発生したことにより、分析対象が拡大し、問題の広がりを認識することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題に関する報告を機会が与えられたので、その準備および報告後の質疑応答を通じて、問題への認識を深めたい。フランスでの改正緊急事態法による団体強制解散制度は、非常事態での結社の自由保障のあり方を示すものであり、保障の限界を探るうえで格好の素材である。引き続きこの問題の検討と分析を行うことにしたい。
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Research Products
(7 results)