2016 Fiscal Year Research-status Report
団体規制法と結社の自由:憲法原理を踏まえた体系構築に向けて
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15K03113
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井上 武史 九州大学, 法学研究院, 准教授 (40432405)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 結社の自由 / 団体規制法 / 強制解散制度 / 部分社会の法理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の全体構想は、憲法上の結社の自由の観点から非営利団体に関する規範群を再編し、日本において、公法・私法の枠組みを超えた「結社法(非営利団体法)という新たな法領域を開拓することである。その中で、本研究は、上記「結社法」構想の重要な一部を構成する「団体規制法」を取り上げて、その理論的分析と体系構築を試みる。 平成28年度は、(Ⅰ)存立規制制度、(Ⅱ)活動支援制度、(Ⅲ)公的規制措置(団体規制)からなる結社法体系のうち、平成27年度に引き続き、(Ⅲ)の団体規制法のあり方の研究を進めた。具体的には、フランスの改正緊急事態法の下での団体規制およびその裁判的救済について、制度的な側面と裁判的な側面の両方について分析と検討を行った。とりわけ、宗教団体に対する強制解散および礼拝所の閉鎖措置は団体に対する強度の抑圧的措置であるため、その合法性・合憲性や事後の裁判的救済のあり方を探ることは、団体規制法の全体像を明らかにするために不可欠の作業である。この研究成果は、平成29年度の早い段階で論文として公表する予定である。 他方、団体法理の一つとして、団体の内部問題と司法審査との関係が問題となるが、平成28年度では、「憲法判例の射程」を明らかにするというテーマの下、最高裁の「部分社会の法理」の内容と射程を明らかにする作業を行った。同論稿は、横大道聡編著『憲法判例の射程』(弘文堂、2017年)に収められている。 また、平成28年度の特筆すべき研究成果として、研究課題の内容を含む憲法概説書を公刊した(片桐直人・井上武史・大林啓吾『一歩先への憲法入門』(有斐閣、2016年))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料の収集と分析が順調に進んでいる。また、平成28年度の研究成果を平成29年度初頭に論文として公表できる見込みも立っており、研究結果が確実に成果公表につながっている。 さらに、平成28年度には部分社会の法理に関する論稿も公表しており、研究課題に関して幅広い視点からの検討を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
図らずもフランスで緊急事態宣言が継続していることにより、それに伴って団体規制制度と裁判例が相次いで出現しているが、これらは、団体法理や団体規制法の姿を掴むのに格好の素材となっている。平成29年度も引き続き、フランス団体法制を参考にして比較法研究を進めるが、最終年度ということもあり、日本法への示唆についての考察も進めていきたいと考えている。
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