2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03115
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
富井 幸雄 首都大学東京, 社会(科)学研究科, 教授 (90286922)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 安全保障法 / 防衛法 / 権力分立 / アメリカ憲法 / 危機管理 / 執行権 / 人権保障 / 憲法第9条 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国の安全保障法学を構築するため、法学の一分野としてその対象と目的を明らかにしなければならない。そのモデルとして世界でこの分野の先端を走っているアメリカの安全保障法学を、これまでの研究を発展させて概観を把握するとともに、現代的課題を探る。今年度はそうしたい観点からアメリカ移民法が安全保障法の一分野であると認識し、同法の安全保障法的側面を、アメリカ憲法の権力分立、特に安全保障の責任者と位置づけられるアメリカ大統領の権限と絡めて研究した。2016年初夏に最高裁判決が予定されているテキサス対合衆国事件を素材として、移民法の移送手続の執行を留保している大統領の行為の合憲性を、移民法に安全保障の要素が加わっていることから大統領に広い裁量が憲法上認められているのではないかとの視点を得た。移民法が安全保障の一分野であることが確立していると言えるとの確信を得る。 また、アメリカでカレントな安全保障法の課題となっている公共衛生(public health)と安全保障法について議論を渉猟した。ジカ熱をはじめアメリカは伝染性の疾病がたびたび流行し、これに対して安全保障法としてどのような貢献をすることができるかが熱く語られている。安全保障とは一見無縁な、ソフトローである公衆衛生法にあって、パンデミックなどの疾病は安全保障の問題となり、系統の違う厚生省関係と軍や諜報機関がどう連携していくかが課題となり、そこに安全保障法としてのメスがはいる余地があるのではないかの知見をえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
採択の通知が10月に来て、実際に研究に取り組むことができたのが11月半ばであったため、当初申請していた研究初年度の計画のうち半分もできない状況であり、また採択の通知を貰うまでの半年間は関連するけれども別の研究課題に取り組んでいたため、着手に相当の遅れが生じ、申請した計画通りにはいかなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
9ヶ月ほどのブランク(採択が10月頃なされた)を埋めるべく努力するが、困難である。ただ引き続き、アメリカの安全保障法学の核となる部分で、我が国の安全保障法学構築にも不可欠と考えられる問題として、表現の自由と安全保障について、おもにアメリカの議論を深める。目下、移民法の退去手続きにおける非公開の制度が知る権利の観点から問題となっており、政府としてはテロに関わるものなど安全保障の観点から正当化されるとする一方、適正手続や知る権利の観点から違憲の主張もある。さらに表現の自由が安全保障の利益のために制限されるケースが度々あり、人権保障と安全保障の利益の調整をどのようにはかるるか、アメリカの議論を中心に研究する。
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Causes of Carryover |
359円の残高が残るけれども、誤差の程度であり、特に予算執行上問題があるわけではない。今年度は年度半ば以降で助成を得たので執行しきれない部分が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の物品費にあてる。
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