2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03115
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
富井 幸雄 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (90286922)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
|
Keywords | 移民法 / 大統領権限 / 安全保障 / 強制退去手続 / 外交的保護 / 邦人救出 / 退去聴聞の公開 / 在外邦人保護義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
移民法が安全保障法であることをアメリカ公法での議論で検討する。まず、移民の決定が執行権=大統領権限であることを制定法や判例や学説を基に分析した。その際、移民法をあえて執行しない大統領権限の合憲性とそこに見られる大統領の安全保障権限との相克を抽出した。さらに外国人の入国や滞在そして国外退去手続に関してそのプロセスでの執行権限の優越の法理を研究した。刑事裁判は憲法上公開が原則とされているのに対して、移民法の退去聴聞は基本的に裁判の契機をとるもの、安全保障の観点から非公開とされることの肯定、否定をめぐる判例の対立と学問的分析を研究した。移民法が安全保障法であることの認識が強く、諜報や大統領権限が複雑に絡み合っている知見を得た。なおこの研究では、ジョージタウン大学とヴァージニア大学での調査研究も含まれている。 また、在外邦人が滞在の外国で人権を侵害されたり、緊急事態で生命や財産の侵害の脅威にさらされたとき、本国はその救済を図る憲法上の義務があり、在外邦人はその履行を求める権利が憲法上みとめられているかを、国際法と外国法での議論(判例があるので南アフリカ憲法、そしてカナダ憲法)を検討し、そして日本国憲法でのかかる視点を提供する試みを行った。接受国で十分救済されないとき、司法的には外交的保護の国際法の制度や理論があり、緊急事態では邦人救出といった事実行為がある。前者に関しては国家がかかる請求を接受国に対してなす義務の履行を求める権利までは法レヴェルとしては国民に認められず、国内裁判所でもそのための訴えは認められない。邦人救出も同様で、そもそも軍隊を派遣することが多いからその国際法上の根拠は一義的ではない。日本国憲法上も条文も学説も法的な権利や義務まで昇華できる理論は見出しえないとの学理をえた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究費の交付が年度の後期以降であったので、その影響を引きづっている。また、アメリカの安全保障法の研究に没頭しているが、その論点が次々と出てきて、そのフォローにも忙殺され、1つの事項に専念して論文にまとめる作業が停滞するきらいがある。
|
Strategy for Future Research Activity |
安全保障法学で何がどのように議論されるかをさらに深く研究するため、引き続きアメリカの安全保障法での議論を研究していく。他国の安全保障法も参照したいと計画していたが、当面はこの分野の研究や議論が深遠でありかつ先端であるので、アメリカの安全保障法の研究を、我が国のそれへの導入や参照の視点もにらみながら、続行していく。移民法に関連して、安全保障法の一大分野である国土安全保障の概念や、それに含まれる諜報(intelligence)の法の研究を深めていく。
|
Causes of Carryover |
計画のうち、国土安全保障の概念に関する研究が緒についたばかりで、関係する文献等の収集ができかかった経費が残ってしまった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
国土安全保障に関する法的研究や諜報に関する法問題の研究について、主に文献収集の経費に充てる。
|
Research Products
(3 results)