2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03115
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
富井 幸雄 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (90286922)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | 安全保障法 / 執行権 / 憲法 / 大統領権限 / アメリカ法 / インテリジェンス / 国土安全保障 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の安全保障法学の体系構築を目指し、アメリカの安全保障法学の体系を研究している。今年度は主に安全保障の法的概念を以下の2つの観点から検討した。 第1に、アメリカにおいて安全保障が国土安全保障(homeland security)にシフトしている現象に着目し、それがいかなる概念で理解され、それに基づいてどのような政策が樹立され法的対応が構築されているのかを研究した。この概念がそれほど明確ではないなかでテロ対策をコアとしており、これに基づいて連邦政府機関の再編や立法がなされている。したがって今後も対テロの名のもとに法制度も膨張していく要素をはらんでいることを指摘した。またこの概念は、安全保障が外部からの脅威に対抗するのに対し、国内向けであることにも留意する必要があって、いきおい、国内のインテリジェンスの強化が図られる政策インセンティブたりうるのを指摘した。 第2に、そこでインテリジェンスについて法はどのようにかかわっているのか、国内でのそれに注意して研究をおこなった。1か月ほどインディアナ大学の客員研究員として現地アメリカで研究を実施し、アメリカのインテリジェンスと法の関係について基礎的かつ体系的な視点を得ることができた。その項目は、主に、①インテリジェンスの概念②インテリジェンスの歴史、特に国内でのインテリジェンスの展開③国家責務としてのインテリジェンス④インテリジェンスをめぐる議会と執行権の関係―憲法的考察:インテリジェンスに関する権力分立と法の支配⑤インテリジェンスの組織法:主たる機関としてのCIA,FBI,NSA⑥インテリジェンスの手段(1):収集、分析、共有と流布のサイクル⑦手段(2):対インテリジェンス⑧手段(3):隠密行動⑧インテリジェンスの保護:リークの問題、に整理できるとの理解をえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本の安全保障法学の体系化を目指し、その前提としてアメリカのそれをモデルとし、その議論を省察する研究をおこなっている。安全保障に関する憲法的枠組み、安全保障の概念、特に9・11以降鮮明になった国土安全保障の法概念、インテリジェンスと法を主な小テーマとして研究計画を実行している。アメリカに赴き研究者などの意見交換や調査研究も重ね、アメリカの安全保障法の体系的把握はおおむね順調である。目下、アメリカの安全保障と法の関係はインテリジェンスをめぐるそれがホットであるだけでなく重要であり、インテリジェンスに法がどのようにかかわっているかという大きなテーマと格闘中である。このテーマについて体系を把握し、主要な項目も理解するにいたったが、それらの具体的な議論や判例や実定法などの細部の法学研究は現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
30年度は研究の最終年度である。日本の安全保障法体系の構築のためにアメリカの安全保障法の体系的研究をおこなっている。日本の安全保障法のための体系的提言まではやはり懇談であるけれども、アメリカの安全保障法の主要な部分はほぼ押さえることができ、その全体像を提示できるように計画を進めていく。日本への喫緊の安全保障法の重要性として、インテリジェンスがあり、我が国でも構築に向けて政策が展開されているが、それはあくまで法の下でなされるべきであり、その必要性を意識したうえでその統制も必要であって、そうした局面にすべて法がかかわらなければならない。最終年度はこうした観点からアメリカのインテリジェンスと法の関係の研究を完成させる。アメリカでの現地研究や調査もおこない、リーガル・リサーチを基本としながら、実態も把握できるよう、研究にカレントな動きと法学的分析を織り交ぜ、意義あるインテリジェンスの法学的研究を行う。軒年度は特に先の項目の最後の部分について、スノーデンの事例を中心に研究を深めていく。
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Research Products
(1 results)