2015 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な共有型経済と憲法上の「近代市民社会における原則的所有形態」
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15K03122
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中島 徹 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60366979)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 持続可能性 / 土地所有権 / 近代的土地所有権 / 総有 / コモンズ / 荘園制 / 古代的土地所有 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究遂行のための基礎的作業として、日本における土地所有権観念が成立してくる歴史過程を古代までさかのぼって研究した。もとより、本研究が直接の対象とするのは現代社会における持続可能性であり、その基礎としての土地所有権観念もまた、近代社会におけるそれであるはずだが、しかし同時に土地をめぐる共有観念、とりわけコモンズの思想の原型として知られる総有観念は、近代社会において成立した観念ではない。とりわけ、日本社会においては、歴史的に形成されてきた土地所有観念との関係を無視して理解することは困難だからである。 以上の視点を踏まえて、以下の点を具体的に検討した。「私的土地所有」は、少なくともその観念の前提には、論理的には無所有の観念があるはずで、それが歴史的に展開して近代的土地所有権の成立を論じることになるとすれば、それ以前が無関係と切り捨てることはできないはずである。この点、土地所有権は、土地への資本投下がなされる農業社会において成立すると考える場合には、少なくとも墾田永年私財法が私的土地所有権成立を前提としての墾田の国家管理としての意味を持つはずである。その前段階における国家的土地所有としての意味を持つ公地公民制のありようは、政治権力と土地所有の関係を墾田永年私財法と対照を示すものとして、身分制と土地所有の関係を考える視点を提供してくれるのではないかと考えた。それが近代的土地所有権へと変質していく際には、断絶面と同時に連続面があるはずである。その意味で、近代的土地所有権は、それ以前と次元を異にする観念と考えるべきなのかという基礎的問題を検討したわけである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては日本における土地所有権の成立過程を検証することを目的としており、その点については一応のめどが立っている。
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Strategy for Future Research Activity |
日本における土地所有権観念成立過程との対比において、比較法の視点を無視することはできない。たとえば、中世以来のイギリス憲法史は、イギリスにおける近代的土地所有権の成立と無縁ではない。ここでは、近代的土地所有権制度の成立は、近世の土地所有制度を廃棄したフランス型と、それを継受しつつ組み替えたという意味におけるイギリス型の揚棄であるのかという西欧社会の歴史を前提とする問いと明治維新における土地改革の意味を比較しつつ論じることも必要となる。この点を本年度においては検証する。
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Causes of Carryover |
前年度においては、別の研究費をそれ以前から受けていたために、研究書の購入において重複があり、当初の予定よりも本研究のための支出が少なくて済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度の研究費は科研費のみであるため、必要な研究費は前年度よりも多く必要となるため、当初の予定通りの支出が必要となるため、計画通りの支出となる予定である。
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