2018 Fiscal Year Research-status Report
持続可能な共有型経済と憲法上の「近代市民社会における原則的所有形態」
Project/Area Number |
15K03122
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中島 徹 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (60366979)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 持続可能性 / 共有型経済 / 水道事業の持続可能性 / 民営化 / 公共財 / ユニバーサル・サービス |
Outline of Annual Research Achievements |
持続可能な共有型経済という研究課題との関係では、2018年12月に行われた水道事業の民営化を批判的に検討し、その成果を現在執筆中である。果たして、民営化により生存に不可欠な水をユニバーサルサービスとして持続的に供給できるかどうか、従来のような公設公営で持続可能であるかどうかに疑問が持たれている現状で、単純な民営化反対論は説得力を欠く。果たして、持続可能な水の供給はいかにあるべきかについて、それを国内問題としてだけではなく、グローバルな観点から水の配分問題としてとらえて検討しつつある。 それとは別に、「持続可能性」および「近代市民社会における原則的所有形態」というキーワードとの関連で、明治期日本の法制度の形成過程を、その当時日本に来て立法作業に携わったいわゆるお雇い外国人たちの法思想を中心に調査研究を行った。その過程で、日本の選挙法制で現在も残る世界的にまれな制度である戸別訪問禁止が、実は明治初期から無名のお雇い外国人の示唆を受けて導入が検討されていたことを発見し、なぜ彼らがそのような制度の導入を図ったのか、彼らが日本社会をどのように見ていたのかについて、多面的に検討する必要性を感じ、研究課題との関係ではやや寄り道であることを承知の上で、歴史研究を行った。研究課題のキーワードとの関係でいえば、なぜ世界でもまれな制度が日本社会においては「持続可能」であったのか?である。 その成果のひとつは、「政治的自由と人格の平等」として公表済み(『現代雇用社会における自由と平等』信山社、2019年3月557頁―580頁)であり、さらに別の論考を書き終えて提出済みであるが、こちらはまだ出版されていないが、秋までには出版される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
明治期法制度は海外に範を取っていることが少なくないが、日本の法制度整備に関係した外国人は必ずしも著名人ばかりではなく、無名な関係者の文献を発掘する作業が必要である。そうした歴史研究の常として、適切な文献の発見には多大な時間を必要とするが、海外に調査研究に行くことができる時間は限られており、期待通りの文献を現状では十分には発見できていないのが現状である。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は本研究の最終年度であるために、現時点で入手しえた資料を基に研究成果をまとめざるを得ないが、実際には本研究はまだ道半ばであり、引き続き現地での資料探索を必要とするため、また本研究から派生した課題の検討も並行して行いたいと考えているため、そのための条件をいかに確保するかが切実な問題となっている。
|