2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03129
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮本 十至子 立命館大学, 経済学部, 教授 (30351315)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際税法 / 出国税 / EU税法 / 国外転出時課税 / BEPS |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度前期は主にMPI(ミュンヘン)で研究活動を行った。EUの出国課税の議論及び税源侵食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting, BEPS)プロジェクトの動向を探るため、欧州委員会(ブリュッセル)でのヒアリング、2015年IFA総会(バーゼル)などの欧州で開催された国際学会への参加を通じて、情報収集と議論の把握を行った。 具体的には、次の研究を実施した。①ドイツの課税権喪失に対する対抗措置の導入背景を明らかにするため、出国課税の沿革、裁判例、学説及び行政解釈を分析した。②出国課税を定めるEU加盟国の国内税法とEU法との抵触可能性の射程を明らかにするため、出国課税に関する欧州司法裁判所判決、欧州委員会文書などの分析を行った。③我が国で新たに導入された国外転出時課税制度について、ドイツ制度との比較を行った。 これらの研究から、次のことが明らかになった。第一に、BEPSプロジェクトの議論を踏まえ導入された我が国の国外転出時(所得・相続・贈与)課税制度は、ドイツ対外取引課税法6条のそれと類似するが、前者が租税回避防止策の側面が強く、国内法上二重課税の調整が精緻に定められているところ、後者は課税権喪失の側面が強調され、租税条約で二重課税の調整が行われていることが明らかになった。第二に、EU加盟国の出国税制度とEU法との整合性が問題になるところ、即時課税と納税猶予などの納税オプションがカギを握ることから、二国間での課税権配分にあたり、所得の課税時期、課税繰延と徴収のあり方などを踏まえた設計が問題になることがわかった。第三に、ドイツ出国課税の考え方は、個人の住所及び財産の国外転出のみならず、法人の国外転出、組織再編税制、国内事業所から国外事業所への事業用資産の移転、移転価格税制などの課税権喪失対抗策に認められることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度において、我が国で国外転出時課税制度が新たに導入され、欧州司法裁判所では出国課税に関する判決が相次いで下されたため、論文の公表が次年度にずれ込んでいるものの、それらの動向も把握しており、おおむね計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度も、ドイツでの調査及び共同研究の機会を得ており、平成29年度に計画していた日独の比較法研究を前倒して行うこととし、米国の分析は平成29年度に行う予定である。法人出国課税に関連する範囲でPE課税、機能移転課税並びに個人の金融所得課税についても取り上げ、研究の幅を広げていきたい。
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Causes of Carryover |
3月にドイツで購入した書籍の支払いが4月になったこと、および、論文公表にかかる費用の執行が次年度にずれ込んだことから、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
書籍購入費用は4月に、論文公表にかかる費用は平成28年度前期中に執行予定である。
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Research Products
(5 results)