2015 Fiscal Year Research-status Report
インフラストラクチャーの維持・更新に係る行政法の新展開
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15K03130
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
荒木 修 関西大学, 法学部, 准教授 (10433509)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 水道 / 都市計画 / 社会都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人口減少社会におけるインフラストラクチャーの維持・更新に関して法学の一分野である行政法学の観点から検討を行うものであり、個々のインフラストラクチャーに関する法制度に関心を向けるものである。 人口減少への対応という課題は社会の様々な領域に見られる。行政法に関する従来までの諸制度・諸法理もまた、人口減少への対応のために変容を迫られている。インフラストラクチャーの維持・更新の問題は、個々の法制度のなかだけで解決を見出すことができない場合がある。2015年度の研究を通じて、単に個々のインフラストラクチャー及びその法制度に生じている種々の変化や対応策を見るだけでなく、それらを全体的な法のあり方を巡る議論に繋げることが必要であり(例えば行政法全般について言えば、裁量を制約することだけが重要ではなく、その適正な行使を促すことができるように柔軟性を保障することが、人口減少に対応するために必要となる)、また逆に、全体的な法のあり方などに照らしてインフラストラクチャーの維持・更新のあり方を検討すべき面があることが分かった(下記②に関わるが、人口減少への対応に関して行政がコンセプトを持つように促しながら、そのようなコンセプトが硬直的なものにならないように法を定めていくことが要請される)。 具体的には、①水道事業(水道経営)の「効率性」に関して、その判断基準や他の公共的な諸要請との調整・衡量が問題になるところ、公営企業法・財政法に由来する規律と経済法(競争法)における規律の間の差異を相対化するような議論が存在すること、②都市計画におけるインフォーマルな計画の重要性に鑑み、法定の計画体系を硬直的に運用すべきでないことなどを学ぶことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
人口減少社会におけるインフラストラクチャーの維持・更新という本研究の中心的な目標からすれば、2015年度に研究できた内容は、個々のインフラストラクチャーの法制度において維持・更新のために如何なる対応策が採られているかを実証的に調べるというよりは、①そのための準備作業や比較研究などに備えた文献調査的なものと、②人口減少に対応すべく全体的に法がどのように変化しているか(また、変化すべきか)に関して抽象的・概括的に検討するものが中心であった。 当初の「研究実施計画」では、2015年度については、日本の水道事業(水道経営)に関して実証的な研究を行い、2017年度においてドイツにおける都市計画及び都市計画論を取り上げる予定であったが、①他の研究との関係で、ドイツ都市建設法制の「社会都市」について本研究の一環として研究作業を進める必要があり、それに時間を要した。②水道事業(水道経営)の調査に先立つ作業(どのような調査項目を立てるべきか、調査対象先としてどのような水道を選定するか)に時間がかかった。そのため、文献調査はそれなりに進んだものの、日本の水道事業(水道経営)に関する実証的な調査・研究はまだ十分にできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度について、当初の「研究実施計画」では、水道についての研究をある程度達成していることを前提として、水道を含めてインフラストラクチャー全般についての共通の法理を探求することを目標としていた。しかじ、2015年度において、日本の水道事業(水道経営)に関して実証的な調査・研究を十分に行うことができなかったので、先ずは、これを仕上げなければならない(なお、実態調査の対象として、関西圏の水道としては、2015年度から引き続いて、特に大阪の水道を取り上げる予定であるが、他の地域については未だ検討中である)。 水道以外のインフラストラクチャーに関しては、あらゆる公物・公共施設を取り上げることは抑も予定していない。時間及び能力的な限界を考えれば、水道との比較で研究を進めることが容易と思われるものに集中することになる。 2016年度に日本のインフラストラクチャー(特に水道)に関する調査・研究が進めることができれば、本研究の中心的な目標を達成することは可能であると思われる。
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Causes of Carryover |
日本の水道事業(水道経営)に関する実態調査を十分に行うことができなかった。そのため、研究会で報告するため旅費を執行したものの、調査のために旅費を科研費から支出することはなかったのが、次年度使用額の生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実態調査(特に関西圏以外の水道の調査)のために旅費を支出する機会は昨年度よりも多くなる予定である。
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Research Products
(1 results)