2017 Fiscal Year Research-status Report
インフラストラクチャーの維持・更新に係る行政法の新展開
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15K03130
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
荒木 修 関西大学, 法学部, 准教授 (10433509)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 都市公園 / コミュニティ / 国土整備 / 自治体間調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、昨年度から引き続いての研究課題として日本におけるインフラストラクチャーの維持・更新のほかに、当該テーマに関するドイツ法における状況についても調査を行った。前者としては、コミュニティの維持と新たな形成及びそれに対する支援という観点から、水道・河川とは異なる公共施設として(都市)公園を取り上げ、その法制度・行政実例などを中心として研究を行い、研究会にて報告を行った。後者としては、ドイツの国土整備法制を取り上げた。自治体に計画高権が認められる一方で、広域的な観点からその調整を図り、国土全体にわたる「発展・整備・保全」がどのように図られ、総体としてインフラストラクチャーの維持・更新がどのように法的に保障されているかを調べることとなり、論文を執筆した(2018年度に公表予定)。 前者については、研究方法としては文献による調査を行った。具体的には、都市公園に関する法制度を歴史的に検討することを通じて、「都市公園法」(1956年制定)においては、戦中・戦後直後の時期において公園用地が様々な目的から減少したことへの対抗として、「公園施設」の限定列挙、「公園施設」に該当しない場合に認められる「占用」についての例外性、公園保存義務を中心として、私人(営利であれ非営利であれ)による管理・運営に対して極めて厳しい態度の法制度が築かれてきたこと、他方で、近年では実態先行で法制度に変化が見られることが分かった。 後者については、「均質な生活関係の創出」という国土整備の目標の法的意義、都市計画を策定する自治体と国土整備との関係、経済地理学から生み出されてきた「中心地」の法的意義などを、判例などを含めて、文献を用いて調査した。均質な生活関係の創出を目指して、中心地の指定などを通じて国土整備法が運用されてきたが、福祉国家的な性格ゆえの限界を受けて、憲法的な保障への懐疑論があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
水道事業の維持・更新の実態の調査の遅れは昨年度も指摘したことであるが、残念ながら、まだ論文として公表できるほどの成果が上がっていない。文献による調査を行ってきたものの、調査対象に相応しい事業体を見極めることができていないのが一因である。引き続き、大阪府及び近隣府県の水道事業を中心として、水道事業における維持・更新の状況および水道料金・国庫補助などの財源調達方法などについて調査を行っていく。 また、2017年度に行った日本の(都市)公園におけるコミュニティ形成については文献による調査は終えたものの、実態的な調査はまだ十分に行うことができていない。例えば、1956年の都市公園法制定時に関しては、それ以前における民間による利用・運営がどのように解消・是正されたかについて、文書等が見当たらないことが原因である。歴史面はともかく、現状における民間による利用・運営及びそれによるコミュニティ形成への支援について、実態的な調査を行い、論文を完成させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況の項目での記載と重なるが、先ずは、昨年度までの研究で十分ではない点、即ち、水道事業の維持・更新及びその財源の調達方法等について、調査を行うこと、河川であれ(都市)公園であれ、占用許可制度など私人(営利・非営利を問わない)による管理・運用を認めることを契機とするコミュニティ形成とそれに対する様々な支援のあり方について、実態的な調査を行い、論文として公表することが、今年度の研究の課題となる。 また、ドイツ法の研究としては、国土整備などの計画法制によってインフラストラクチャーを全国土にわたって差異をある程度は認めながらも整備されることが分かったものの、それを具体的に支えている構造(特に連邦・ラント・自治体の各層における財政とその調整)はまだ研究できていない。本年度はこの点の研究を行うことで、比較対象としてのドイツ法の特徴を浮かび上がらせたいと考えている。 何れの研究についても最終的には論文を公表することを目指すが、コミュニティ形成とそれに対する支援及びドイツにおける国土整備等について学内等の研究会で報告することを予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主要な原因は、今年度までの研究だけでは実態的な調査がまだ十分には行うことができていないこと、そのために例えば河川敷地や公園などの事業の調査のために旅費を執行することがなかったことにある。 そのため、水道であれ、河川敷地や公園の民間による管理・運用であれ、昨年度までの研究で十分でなかった点は今年度も引き続き研究を行うことになる。具体的には、水道については、近隣府県(特に、大阪府、奈良県、兵庫県)及び四国地方(特に、香川県)を中心に訪問調査を次年度前期において実施することを予定している。公園についても、次年度前期において文献による調査を進めながら、実態的な調査の対象先の検討を進めることで、次年度後期には訪問調査を実施したいと考えている。なお、河川敷地や公園については、歴史的な観点(法令等の改正に前後する中央省庁における情報収集及びそれに対する府県による対応)から文献による調査を補充することも必要であり、図書館・公文書館への訪問のために旅費を支出することも必要であると考えている。以上の点から研究を遂行することによって、昨年度までの未使用額を含めて今年度の研究費を費消することになる。
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