2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03131
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
辻 美枝 関西大学, 商学部, 准教授 (00440917)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 消費課税 / 保険取引 / 租税法 |
Outline of Annual Research Achievements |
保険取引の消費課税上の問題のひとつに、保険取引が非課税取引であることから生じる税の累積化がある。当該税の累積化は保険事業の展開・事業形態の選択に影響を及ぼす。EUは、このような税の累積化を緩和する方策として、グルーピング、コストシェアリング、オプション(課税選択)制度を採用している。研究初年度である平成27年度は、これらのEUの制度分析を中心課題として、具体的には以下のような研究を行った。 8月末から9月初旬に欧州に出張し、IFA(International Fiscal Association)年次総会に参加するとともに、International Bureau of Fiscal Documentationにて文献・資料収集をした。IFA年次総会のセミナーでは、“Cross-border supply of services and VAT/GST: Development of IFA proposals”をテーマに、国境をまたぐサービス取引の増加と各国VAT(Value Added Tax)制度のバラツキによる二重課税や二重非課税等の問題に対処するため、OECDの2014年ガイドラインを含めたVATの国際基準による各国の協調の必要性などが報告された。 3月初旬に欧州委員会にて間接税担当者と面会し、特にグルーピング、コストシェアリング制度について、欧州委員会の取り組みと最新の動きに触れることができた。そして、EUでは、保険取引と保険取引以外の金融取引を区別することなく、これらの制度の脱税・租税回避スキームへの利用の懸念、Cross-border取引への適用関係がさらなる課題となっていることが明確になった。 以上の調査を踏まえて、平成27年度研究の中間報告として、4月に研究会報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、第一研究段階として、保険会社の国際事業展開に関わる問題につき租税法の観点から法的基礎分析をするため、「グループ」概念について所得課税および消費課税の横断的な研究を行うことを予定していた。 しかし、EUの立場からVATグルーピング制度の目的と枠組みを整理することが、結果として、国内法レベルでの所得課税と消費課税におけるグループ概念の相違を浮き彫りにし、今後の課題分析に資すると考え、EUのVAT指令におけるVATグルーピング制度およびそれと対比して捉えられるコストシェアリング制度の調査を優先した。研究順序が変更になったが、平成27年度の調査研究により本研究課題の論点がより明確になり、次年度以降の研究につながる有用な礎ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度研究内容を踏まえて、今後は当初予定していた消費課税上の「グループ」概念の研究を所得課税上のものと比較して分析をする。それとともに、引き続きグルーピングおよびコストシェアリング制度を国際課税上の観点から研究する。 一方で、EUの制度を批判的に分析するため、EUとは異なる対応策をとるニュージーランドのGST(Goods and Services Tax)について再検討する。ニュージーランドの制度は、課題番号22730032の研究で取り上げたが、そこでの主眼は、最終消費者である保険契約者と保険会社間(最終消費段階)の保険取引にあった。本研究はグループ間取引を対象とするため、取引段階及び視点が異なる。 引き続き、国内外の図書館・研究機関で文献・資料の収集をするとともに、IFA年次総会に参加して各国の租税法研究者と情報交換をし、本研究に関する最新情報の入手に努める。 研究の適当な時期に関大租税法研究会等で研究報告をし、そこでの議論を本研究課題に反映させ、成果論文を作成する。
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