2015 Fiscal Year Research-status Report
環境秩序制御主体に相応しい適正手続と救済の法理の構築
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15K03132
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
山田 健吾 広島修道大学, その他の研究科, 教授 (10314907)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 環境行政 / 適正手続 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)平成27年度の本研究は、実定法及び判例・裁判例における環境秩序制御主体の法的地位を整理することに重点を置いて実施した。 実定法及び判例・裁判例は、国及び地方公共団体を第一義的な制御主体として位置付けている。 実定法が、処分の名宛人以外の者に行政決定手続への関与を認める場合、「住民その他の関係者」や「環境保全の見地から意見を有する者」といった規定がなされることが多い。かかる規定は、手続に関与する主体の不特定性ゆえに、一部の例外を除いて枠組みを定めるものに過ぎない。判例・裁判例は、仮の救済も含めて、処分の名宛人以外の者の手続的地位を具体的なものとして承認することに消極的である。実定法が関与主体を特定しないことで、だれもが当該手続に関与可能となり、環境秩序制御主体の「複線化」・「多様性」・「多面性」に対応した手続を具体的に設定することが可能となる。しかし、これらの者の法的地位に対する不利益的効果が問題となっても、判例・裁判例は、これらの者の属性を捨象し、その具体的な権利・利益を精査することはない。また、手続の内容に関して公正性や不偏性を問題にすることもない。 このような状況に対して、行政法学及び環境法学は、団体訴訟の可否を含めた、処分の名宛人以外の者の手続的地位の擁護実現のための議論を行ってきた。しかし、制御主体の今日的特性に資する手続的規律を、適正かつ民主主義的なものとするための具体的な法的基準を提示するには至ってはいない。 (2)研究代表者は、平成27年9月1日から平成28年3月31日まで、オーストラリア国立大学(College of Asia and the Pacific)において在外研究を行った。上記(1)の研究と並行して、平成27年9月から、同大学に所属する研究者と意見交換を行った。平成28年度に予定している研究計画を実施するための資料収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① わが国の環境行政領域法における実定法や判例・裁判例の精査を通じて、処分の名宛人以外の者の手続的地位に係る規定が、制御主体の今日的特性に適合的に解釈する可能性が見いだせたことは大きな成果である。 ② 判例・裁判例が、処分の名宛人以外の者の手続的地位の承認に消極的であることが再確認できたこと、そして、処分の名宛人以外の者が関与する行政決定において、手続の公正性や不偏性に吟味を加えないことが確認できたことも大きな成果である。 ③ オーストラリア国立大学の環境政策史の研究者、アジア・オセアニア地域における草の根運動の研究者やオーストラリアの環境運動に関する研究者らと、オーストラリアにおける環境問題の内容とその現状、環境政策における参加をめぐる問題点や課題について意見交換を行うことができた。今後、これらの研究者と本研究テーマにつき共同研究を進めていくことについて了承が得られたことは大きな成果である。平成28年度に実施を予定している研究計画に関する資料収集を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の予定 以上の日本法研究を踏まえて、オーストラリア、イギリス及びアメリカにおける環境秩序制御主体に係る手続的地位に係る規定の精査を行い、適正手続の保障水準を含めた、制御主体の手続的地位の具体的内容をめぐる理論の到達点を確認する。 研究代表者は、平成28年4月1日から8月31日まで引き続き、ウロンゴン大学で在外研究を行う。そのため、上記課題については、オーストラリア及びイギリス法研究を先行して行う。同大学の環境法研究者やNPO団体などと、上記課題について意見交換を行う。 アメリカ法研究についてはこれに引き続いて行い、帰国後、広島修道大学の提携校であるノースカロライナ州立大学あるいはアリゾナ州立大学、または、アメリカン大学のいずれかを訪問して、行政法研究者にヒアリングを行う等実態調査を行う。 前年度平成27年度に実施できなかった、わが国の行政機関への実態調査も、帰国後行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、本年度購入予定であった書籍が、本学の物品納入期限までに、納入することが困難であったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額を用いて、本年度購入予定であった書籍を購入する予定である。
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Research Products
(1 results)