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2016 Fiscal Year Research-status Report

国連体制における「要請による干渉」の機能変化―二重機能論からのアプローチ―

Research Project

Project/Area Number 15K03134
Research InstitutionChiba University

Principal Investigator

藤澤 巌  千葉大学, 法政経学部, 准教授 (20375603)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2018-03-31
Keywords干渉 / 主権 / 国際連合
Outline of Annual Research Achievements

平成28年度は、冷戦終結から現在に至る国家実行を調査検討し、冷戦期と比較して、「要請による干渉」の機能に変化が生じているか否かを検討した。研究を効率的に進める観点から、とくに1999年以降の「要請による干渉」の諸事例を集中的に検討した。
1999年以降の国家実行を概観すると、「要請による干渉」が、国際の平和と安全のための国連安全保障理事会の行動と不可分に結びついて実行される事例が増加していることがわかる。すなわち、フランスのマリ介入(2013)および米国のイラク介入(2014)だけでなく、例えば、英国のシエラレオネ介入(2000)、フランスによるコートジボワール介入(2002)、オーストラリアによるソロモン諸島介入(2003)および東チモール介入(2006)、米国のアフガニスタン駐留(2003-)およびイラク駐留(2009-2011)など、政府の要請に基づく軍事行動は増加の傾向にあり、しかもこれらの事例の多くは、マリ内戦へのフランス軍の介入やイラク内戦への米軍の介入と同様に、国連安保理の行動と「要請による干渉」が、同時並行的にまたは相前後して展開され密接な連関を示している。このような現象からは、「要請による干渉」が、伝統的な一般国際法上の「自己保存」に基づく干渉に対して「既存政府の要請」要件によって制約をかけるという消極的機能を果たすだけでなく、国連憲章における集団安全保障の枠組みの中で、安保理の行動を補完する積極的機能を果たしていることが示唆された。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の予定通り、1999年以降の「要請による干渉」の諸事例を集中的に検討した。
諸事例の検討の結果、、1999年以降、「要請による干渉」が、国連憲章における集団安全保障の枠組みの中で、安保理の行動を補完する積極的機能を具備していることがわかった。

Strategy for Future Research Activity

平成29年度は、前年度までの国家実行の調査分析結果を理論的に整理する。具体的には、第二次世界大戦後の国家実行に観察される「要請による干渉」の諸機能を、セルの二重機能論の枠組みに位置付けることを試みる。
セルによれば、中央集権的な統治者が存在しない国家間秩序においては、国家の統治者は二重の役割を果たしている。すなわち、国家の統治者は、彼らが国家法秩序で機能する場合には国家的統治者であるが、彼らが国際法秩序で機能する場合には国際的な統治者である。この国家の二重機能の結果、干渉についても、古典的理論が、正当な干渉の動機が存在するためには国家の利益が侵害されねばならないと考えるのに対し、セルは、侵害された国家利益は干渉を正当化するのに十分でなく、さらに国際法秩序自体が侵害されている必要があると指摘する。
前年度までの国家実行の検討を通じて、本研究の上記仮説が実証される場合、二重機能論を応用することによってこの実態を理論的に体系化することができるように思われる。すなわち、19世紀の「自己保存」の干渉は、まさに国家利益の実現という二重機能の一つ目の機能を果たすものである。他方で、冷戦期における「要請による干渉」および、近年の安保理の行動の補完としての「要請による干渉」は、両者とも二重機能の二つ目である国際法秩序の実現という機能を担うが、前者が従来の「自己保存」のための干渉を、「既存政府の要請」の要件を課すことによって武力行使の禁止という国連体制の基本原理の枠内に限定するという消極的な機能を持つに過ぎないのに対して、後者は国際の平和と安全のための国連の行動を補完するという積極的機能をも果たしていると捉えうる。

Causes of Carryover

直接経費をほぼ全額支出したが、1,410円の次年度使用額が生じた。これは物品購入による支出に際してやむを得ず生じた差額である。

Expenditure Plan for Carryover Budget

平成29年度は29年度直接経費800,000に1,410円の次年度使用額を加えた801,410円について、前年度までの国家実行の調査分析結果の整理のための経費に支出する。
具体的には、第二次世界大戦後の国家実行に観察される「要請による干渉」の諸機能を、セルの二重機能論の枠組みに位置付けることを試みるための資料や書籍の購入に801,410円を当てる予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2017 2016

All Journal Article (4 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] IMFの融資におけるコンディショナリティの法的性格2017

    • Author(s)
      藤澤巌
    • Journal Title

      国際法研究

      Volume: 5 Pages: 99-124

  • [Journal Article] 国際法における不干渉原則論の構図(6・完)―適用問題への一視座―2016

    • Author(s)
      藤澤巌
    • Journal Title

      千葉大学法学論集

      Volume: 31 Pages: 25-70

  • [Journal Article] ジュネーヴ諸条約―人道を担うもの2016

    • Author(s)
      藤澤巌
    • Journal Title

      法学教室

      Volume: 431 Pages: 114-120

  • [Journal Article] 気候変動枠組条約―法と政治と科学と時間2016

    • Author(s)
      藤澤巌
    • Journal Title

      法学教室

      Volume: 435 Pages: 139-145

  • [Book] 国際法で世界がわかる―ニュースを読み解く32講2016

    • Author(s)
      森川幸一・森肇志・岩月直樹・藤澤巌・北村朋史 編
    • Total Pages
      342
    • Publisher
      岩波書店

URL: 

Published: 2018-01-16  

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