2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺谷 広司 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30261944)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 人権の主流化 / 立憲主義 / 国際法と国内法の関係 / 人権基底的思考 / 人権外交 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、5カ年にわたる本研究企画の初年度であり、1~3年目は日本語単著執筆のための期間と位置づけている。研究の進捗状況は、大いに進んでいるとは言えないとしても、一定程度は進行しているという状況である。 本研究企画では「人権の主流化」「立憲主義」「国際法と国内法の関係」を主要論点としているが、企画全体を包括できるような報告機会を2015年の国際人権法学会の基調報告で得ることが出来た。「国際法における人権基底的思考の背景と展開」と題し、本研究企画に示したのと同様の問題意識を示した後、この問題の歴史的背景を論じ、具体的な展開の様相をこの現象の肯定的側面・否定的側面に分けて、分析的に論じた。通常の学会報告の範囲なので長いものとは言えないが、各種の論点を一覧する必要があり、これによって本研究企画にとっても有益な方針を得るに至った。現在、このときの報告を基に学会誌『国際人権』への原稿を準備中である。 この他、上記学会報告に先立って「人権外交の法理論」を公に出来た。 本研究と関わりの深く、私自身も委員である国際法協会国際人権法委員会の会期間会合は3月に行われる予定であったが、2016年の初めに、2016年5月開催に変更になった(開催場所は、ストラスブール、欧州人権裁判所)。 この会合では、討議の対象として各国における国際人権条約義務ないしその監督機関の決定の実施に関するプラクティスを含む。また、提出されているディスカッション・ペーパーは諸地域の第一線の研究者が記す最新の状況に関するものなので、自分自身の研究の経験的論証を充実することに役立つ。のみならず、“good practice”に注目するアプローチの有用性の検討は、本研究企画の理論的側面を展開する上でも貴重な刺激となっている。現在、5月の同会合をより実りあるものにするための準備に勤しんでいるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「おおむね順調に進展している」よりも、やや「やや遅れている」寄りくらいが正確な評価かも知れない。 進展していると言える要素は、第1に、上記の学会報告を行ったことで、研究計画全体についてかなり見通しが良くなっている点である。これによって最終成果との関係で作業仮説を得られたという側面がある。また、本研究企画を公の作品とする場合、最低限、この報告を肉付けしたものであっても、十分に学会に貢献できる内容だと考えている。第2に、上記のように「人権外交の法理論」を公に出来た。形式的には必ずしも、本研究企画に関わっていなかったつもりだったが、読み返してみると(あるいは上記学会報告で枠組みを見直すうちに)、本研究企画と通じる内容があることに気づき、この内容を踏まえて議論を充実させることが出来るのではないかと考えている。 遅れていると言える要素は、第1に、私としてはもう少し、個別論点に包括的な調査を進められたはずだという思いがある点である。とりわけ、各分野における人権の位置づけ・機能については、そう困難ではないはずだったので、少々残念である。第2に、予定通り行かなかったという意味では、上記の研究会合が3月から5月に変更になったことが挙げられる。これは各メンバーのディスカッション・ペーパーが十分に揃っていなかったことが原因であり、また、欧米の参加者が多いところ、2、3月は欧米では授業期間と重なっていて不都合だという事情に伴う。しかし、形式的には2ヶ月程度の遅れに過ぎず、この種の国際会合としては珍しい変更ではない。私としても貴重な機会のためにより長く準備出来て良かった側面もある、なお、日本の会計年度との関係では年度が変わることになったので、その部分については予算の執行を遅らせることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度でもあり、研究計画についてとくに大きな変更はない。変更の必要も、概ね想定の範囲内だと言える。あとは、やるだけである。
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Causes of Carryover |
2016年3月予定の研究会合が5月開催予定に変更になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
変更になった5月に使用予定である。
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Research Products
(2 results)