2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
寺谷 広司 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (30261944)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際法 / 人権基底的思考 / 国際人権 / 人権の主流化 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際人権法学会誌である『国際人権』(2016年報、第27号)に論文「国際法における人権基底的思考の背景と展開」を公表した。本計画が着目している「人権基底的思考」の歴史的展開を簡略に追ったが、時期を大きく3つに区切り、また展開の領域・種類を4つ設定し、自分なりに明確な整理ができた。人権基底的思考が国際社会ないし国際法に根付いてきている現象であり、今後とも続く、少なくとも大きく後退することはないことを確認した。その上で、当該展開の肯定的側面、否定的側面ないし困難を3つずつ挙げ、解決の方向性を試論的に論じた。同論文は、前年の学会報告を基に適宜、加除修正を行ったものだが、本科学研究計画の全体を俯瞰する重要な論文となった。 また、部分的に、他の共同研究の一部でもあるが、「国際法における『裁判官対話』――その理論的背景」(『法律時報』第89巻2号、2017年2月号)の公表も本企画の理論部分を構成しており、重要な成果物となった。本論文は「裁判官対話」の国際法上の基礎を探る作品である。対象を人権に限定していないが、実際には「裁判間対話」の「主戦場」の一つである人権を中心的素材として取り扱っており、本研究計画に大いに関わる。 このほか、計画に大きく関わる国際法協会国際人権法委員会での作業は2016年8月のヨハネスブルク大会で一応の終了を見た。本大会及びそのために同年5月にフランス・ストラスブールで開いた国際会合での質疑応答は研究にとって重要な刺激となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体像が明らかになるだけでなく、もう少し、個別に実際に書いたものを書きためることが出来れば良かったと思っている。また、当該研究目的に関して、複数の論点を同時並行的に検討していること、2016年度の終わり頃から必ずしも科学研究費の直接の対象ではなかった大きい仕事にも関わり始めたことから、仕事の対象が分散気味で、作業が進んでいるとの実感をもちにくい状況ではある。その点では、やや遅れ気味とも感じる。 他方、全体を俯瞰する論文や理論部分の一部に関する論文の公表や国際学会・会合への出席など、一応、ほとんど計画通りではある。
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Strategy for Future Research Activity |
理論部分の一部を構成する「裁判間対話」に関する研究・調査及び公表を先行させる。もともと計画では英語公表を少しずつ開始する予定だったが、先日、国際学会での報告公募で採用が決まり、実施予定である(2017年8月アジア国際法学会、於ソウル)。少々角度は異なるが、同じく理論部分である「調整理論」との関係では、雑誌原稿の依頼があり(『論究ジュリスト』2017年秋)、既存の成果を補完・発展させたい。 このほか、公表以前の段階として、人権基底的思考の他分野への広がりについて、もう少し個別研究を進めておきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
2016年3月開催予定の国際会合が5月に延期されたため。実際には2ヶ月程度のずれだが、年度をまたいでしまったので、会計上このようになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に実施した。
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