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2018 Fiscal Year Research-status Report

国際法学における人権中心思考の基礎と展開

Research Project

Project/Area Number 15K03136
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

寺谷 広司  東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (30261944)

Project Period (FY) 2015-04-01 – 2020-03-31
Keywords人権 / 人権条約 / 刑事的規律 / 裁判官対話 / アジア
Outline of Annual Research Achievements

本年度の研究の展開として、必ずしも当初の研究予定の柱としてこなかったが、人権条約の刑事的規律に関する論考を発表した。具体的には、特に「人権の国際保障における刑事的規律――国際人権法と国際刑事法の構造的同一性と展開の諸態様」『法律時報』(第90巻10号、2018年9月号)、「人権条約システム参加の背景及び促進戦略とその理論的含意」『法律時報』9月号(90巻12号)である。特に前者は、人権条約の刑事的規律に関わる一般的考察を展開したものである。刑事的規律は、人権基底的思考が実際に展開する際の一つの代表的態様と言え、重要な考察となった。後者は、後半部分で強制失踪条約を取り扱うことで、上記と同様だが、前半部分でより一般的に人権条約に関する各国の締結の動機と履行確保について論じ、これは、人権基底的思考の前提ないし普遍的妥当を問題にするものでもあった。
また、部分的には他の共同研究の一部でもあるが、「アジア地域人権秩序構想の批判的考察――特に『裁判官対話』論に注目して」岩澤雄司ほか編『国際法のダイナミズム』(有斐閣、2019年3月)は、地域を東アジア地域に限定した上で、人権基底的思考のプロセス過程の制度化について考察するものだった。昨年の本報告書で示したように、第6回アジア国際学会研究大会(2017年8月)における報告をベースにしており、その際の理論的基盤は「対話」の観念や昨年触れた「調整理論」である。
このほか、計画にとって重要だと位置づけていた国際法協会国際人権法委員会での作業は、主題が緊急事態における人権の保護の多様な展開に関するものへと変更したこともあって、計画通りのものではなくなったが、本研究を側面から支えている。8月のシドニー大会に参加し、各種の知見を得た。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

総じて言うと、本研究はやや停滞気味とも言える。昨年記したように、その最も大きな要因は別の実務的仕事(国連の強制失踪委員会委員)を引き受けたことで、海外出張を含め、時間の相当部分をそちらに割くべき事情が生まれているからである。とはいえ、当該仕事も本研究と関わらないわけではなく、実務的刺激によって、本研究にとっても得がたい重要な示唆を得ている。
また、研究期間が後半に入って、当初は予定していなかった展開を試みているのも(具体的には、上記のような刑事的規律からの考察)一つの特徴になっている。これは、計画全体を曖昧にしている側面もあるが、他方で、望ましい豊富化だとも思われ、どちらと言うべきかは今後のまとめ方次第だとも思われる。
上記に書いた「研究実績の概要」は実に、昨年の本報告書で「今後の研究の推進方策」と記したものの通りで、かつ実際に公表できているので、短いスパンで見れば予定通りに研究が進捗しているとも言える。

Strategy for Future Research Activity

上記の「実務的刺激」の一つの公表物として、人権条約機関の審議の在り方を公正性と実効性の観点から考察する論考を用意している。ただし、これは字数も1万字強程度に制限されており、この考察を深めていくことが必要である。「対話」の観念を重視すると言っても、実際にはそれは制度的条件の下で論じられるべきだからである。これは一つには同論考で着目した「公正性」「実効性」といった理論的枠組みを精緻化していく作業を含むし、また、「建設的対話」の歴史的淵源を(これについては一定の先行研究があるものの)自分自身で原資料に当たって精査していくことを含んでいる。
また、一見、関連性が弱いように見えるかも知れないが、人権規範(人権条約及び慣習国際法としての人権)の解釈に焦点を当てた研究を進める予定である。というのは、「対話」の主要な態様として各種司法・準司法機関の判決・決定の相互参照があり、従って、そうした機関による法文や実行の解釈が重要な思考過程の一部となっているからである。またこの「解釈」をめぐって、代表的には国際法委員会においてであるが、近時多くの議論が蓄積され、論ずるに値する。
以上に加えて、2019年度は最終年度となるので、継続的な注意として、一つの作品としてまとめるために、対象を絞りつつも、どの程度戦線の拡張を含むべきか、再検討すべきだと考えている。個別の論点群としては、科学研究費受給に一定程度見合う成果を上げているとも思うものの、一つにまとめる重要性を認識しているからである。

Causes of Carryover

今年度としては相当額を使用しているが、前年度の繰り越し分があるため。

  • Research Products

    (3 results)

All 2019 2018

All Journal Article (2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] 人権の国際保障における刑事的規律――国際人権法と国際刑事法の構造的同一性と展開の諸態様2018

    • Author(s)
      寺谷広司
    • Journal Title

      法律時報

      Volume: 90巻10号 Pages: 59-65

  • [Journal Article] 人権条約システム参加の背景及び促進戦略とその理論的含意2018

    • Author(s)
      寺谷広司
    • Journal Title

      法律時報

      Volume: 90巻12号 Pages: 78-85

  • [Book] 「アジア地域人権秩序構想の批判的考察」『国際法のダイナミズム――小寺彰先生追悼論文集』2019

    • Author(s)
      寺谷広司
    • Total Pages
      28
    • Publisher
      有斐閣

URL: 

Published: 2019-12-27  

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