2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K03138
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 康 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (50263059)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際私法 / 欧州人権条約 / EU法 / ハーグ条約 |
Outline of Annual Research Achievements |
広義の国際私法に対して人権規範が及ぼす影響について包括的検討を行い、内国における私法秩序の構成要素でありつつも、外国法秩序との接点でもある国際私法の機能・位置づけについて新たな視点を提示しようとする本研究の目的の実現のため、本年度においては準備作業として関連する判例や文献の調査を行ったほか、準拠法の適用の場面を例として人権規範との関係について若干の問題の整理を行った。 また、2014年にわが国が加盟したことで社会的にも関心を集めている、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する1980年のハーグ条約(以下では「ハーグ条約」)と、欧州人権条約などの人権規範との関係を、欧州司法裁判所と欧州人権裁判所の関連裁判例を素材として検討を進めた。EUにおいては2003年の新ブリュッセルII規則において、ハーグ条約の仕組みをEU内において補足・強化するための仕組みを導入しているところであるが、他方でこのような仕組みが欧州人権条約との関係から問題が生じる余地がある。ここでは欧州人権条約からEU国際私法へという一方通行ではなく、EU司法裁判所側の対応を受けて欧州人権裁判所の応対という、双方的な対話の動きが見られ、いわゆる裁判官対話の一種である。これに関しては、今年度においてなお論文の形で成果としてまとめることはできなかったが、これに関連して、ハーグ条約へのロシアなどの第三国の加入に対して同意する排他的権限がEUにあるとした、欧州司法裁判所の裁判所意見は、リスボン条約後のEUの黙示的対外権限に関する初めての裁判所の判断であり、これについての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度においては、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する1980年のハーグ条約と欧州人権条約などの人権規範との関係について、欧州司法裁判所と欧州人権裁判所の関連裁判例を素材として検討を進めて、成果をまとめる予定であったが、その段階にまで至っていない。ただし、検討は進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)本来ならば法廷地では(抵触規則または外国判決承認ルールにより)承認されない法的地位が、外国で当該外国法に従って有効に(判決または判決以外により)成立しており、その地位の承認が欧州人権条約を根拠に求められている裁判例が、欧州人権裁判所において2007年のWagner事件以来現れているが、この動きのフォローアップと検討を行う。 (2)上記(1)を中心に検討を進めるが、これ以外にも、国際裁判管轄と人権規範、準拠外国法の人権規範違反の際の処理、外国判決の承認執行における人権規範の影響についても検討を進める。 以上いずれについても、ヨーロッパを中心とする諸外国の判例・文献の調査・収集・整理・検討という、一連の方法により研究を進める。
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