2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03138
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中西 康 京都大学, 法学研究科, 教授 (50263059)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 外国判決の承認 / 欧州人権条約 / EU法 / 状況の承認 / 人権 / 双方主義 / 一方主義 / 普遍主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
法廷地の外国判決承認ルールによれば本来承認されないはずの外国判決であっても、それを承認拒絶すると人権規範の保障する人権に対する侵害となるために、その承認を人権規範が要求するのではないか、つまり、一定の場合に人権規範の要求により、外国判決を承認する義務が生じるか、という問題を検討した。欧州人権裁判所の2014年のMennesson/Labassee事件判決を、2007年Wagner事件および2011年のNegrepontis-Giannisis事件と比較して、私生活及び家族生活の尊重についての権利を保障する欧州人権条約8条が、外国判決の承認に対していかなる要求をしているかを分析した。2007年判決及び2011年判決と、2014年判決は、家族生活の尊重に関して結論が異なっているかのように見えるが、人権規範違反であるかの審査の枠組に変更はない。単に、これらの問題に関する欧州各国法の立場についての大まかなコンセンサスがあるか、それとも、立場が多様に分かれているかという状況の違いが、手段の比例性審査の際に影響を及ぼしただけである。いずれにせよ、外国判決を一律に承認する義務というようなものを欧州人権条約及び人権裁判所が加盟国国際私法に求めているわけではない。このような、国際私法外部の規範が一定の制約を課すという現象は、EU市民権などのEU法からの影響など、ほかにも存在する。以上のような現象は、準拠法選択と外国判決の承認とは別の、状況の承認という第三の手法であるとする議論が活発に行われている。この現象を理解するための1つの視角として、事象を法廷地国際私法に照らして評価する原則への例外という見方がありえよう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題にとって中心的問題の1つである、人権規範からの外国判決承認ルールへの要求のテーマについては、今年度、成果を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
国際裁判管轄、準拠法、外国判決の承認執行の3つの問題領域について、引き続き、人権規範との関係について、検討を進める。 研究方法としては、欧州を中心とする比較法的研究を、判例・学説の整理をすることで行う。
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