2017 Fiscal Year Annual Research Report
The status of international law in the domestic legal orders of some "small" States in Europe
Project/Area Number |
15K03139
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
濱本 正太郎 京都大学, 法学研究科, 教授 (50324900)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 国内法秩序における国際法 / 憲法と国際法 / グローバル法 / ルクセンブルク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度まで同様に関連文献及び裁判例の収集に努めると共に、研究のまとめに取り組んだ。資料としては、ルクセンブルク法全般に関する基本的文献(Pascal AncelほかによるDroit du Luxembourg, LGDJなど)をルクセンブルクにおいて入手することが出来たことが一つの成果である。 ルクセンブルクにおいては、1996年7月12日の憲法改正による95条terの追加に至るまで、ルクセンブルク法秩序における国際法の位置づけについて何らかの示唆を与える規定すら存在しなかった。その中で、破毀院刑事部は、1954年7月14日判決において、ルクセンブルクが当事者となっている条約と、当該条約がルクセンブルクについて発効した後に定立された法律とが矛盾する場合、条約の方が優位すると判示した。その理由付けは必ずしも判然としないものの、国内立法が国内機関の意思に由来するのに対し、条約はそれよりも上位に位置する淵源を有するからと述べられている。この、「国内立法が国内機関の意思に由来するのに対し、条約はそれよりも上位に位置する淵源を有する」ために条約が法律に優位するという理由付けは、ほぼ表現もそのままに1978年12月7日の国務院訟務部判決や1997年6月25日の行政裁判所判決でも繰り返されている。 他方、憲法規定との関係での条約の位置づけは明確でない。もっとも、1996年憲法改正により追加された95条terは、憲法裁判所による違憲立法審査の対象から条約を承認する法律を除外しており、そこから憲法に対する条約の優位が推測される。もっとも、ルクセンブルクの学説は、ほぼ一致して憲法に対する条約の優位を説いているが、必ずしも95条terの規定にその根拠は置いていない。その理由付けと、慣習法の位置づけとが課題として残っている。
|