2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03148
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吾郷 眞一 立命館大学, 法学部, 教授 (50114202)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国際標準化機構 / 企業と人権 / 国連ビジネスと人権行動指針 / 労働CSR / ILO基準適用監視機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は研究代表者が長年にわたり追求してきた課題、具体的には、平成26年度に終了した基盤研究(C)「国際法秩序の中の国際労働法」、およびその前、平成23年終了の基盤研究(C)「ILO基準監視機構の準司法機能」の直接的延長であるため、初年度ではあるが、文献収集などの基礎的な作業はほとんどおこなわず、直ちにこの3年の間に達成すべき具体的課題の分析から開始した。 すなわち、国際標準化機構(ISO)26000や国連ビジネスと人権行動指針に代表される、法律的な文書ではあるが、ある意味ではソフトローにすらなっていないものについて国際社会や国際組織がどのように対応し、それらの文書がどのように意味づけられていっているかを分析した。 6月25日にマドリッド開かれたワークショップ(Workshop on a Treaty on Business and Human Rights")にSkypeで参加し、国連で進行中のビジネスと人権規範条約化作業にとってILO基準監視活動の経験がもつ役割の重要性を発表した。(発表を母体とする論文自体は、現在書籍の一部として公刊準備中)7月11日に開かれた京都大学国際法研究会で、ワークショップ主催者の一人であるスロベニアの研究者の発表を手伝い、本問題についての関西圏国際法研究者との意見交換を行った。11月には、ジュネーブで開かれた国連人権理事会主催のビジネスと人権グローバルフォーラムに参加し、国連指導原則が、実際に具体化されていく過程を見聞すると同時に、ILA(国際法協会)スタディーグループのメンバーと意見交換を行った。 ジュネーブではさらに、今年から委員に就任したILO条約勧告適用専門家委員会の審議の中で、監視機能が実際にどのように働いているかを体験した。また、本年度10回にわたり社会保険労務士連合会の研究会に参加し、労働CSRの研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた研究計画は、おおむね実行に移すことができた。特にCSRについては、社会保険労務士連合会の研究組織を立ち上げることができたため、労働CSRに特化しているものの、非拘束的な法的文書が、いかにして実効的になりうるかという研究が、予想以上に進展した。(社労士連合会機関誌「月刊 社労士」に途中経過を発表) 他方、OECD多国籍企業ガイドラインの研究は、前記ILOの委員会委員に就任したため(3週間にわたってジュネーブに拘束されるため)、OECD出張の時間的余裕がなくなった。パリの本部での聞き取り調査は次年度への課題となったが、逆に、ILOの委員会と国連グローバルフォーラムの時期がほぼ重ったことにより(ILOジュネーブ本部での委員会参加のための旅費はILOが負担したため)、本来予定していたジュネーブでのグローバルフォーラム参加のための旅費が不要となった結果、そのまま次年度に回すことができた。 なお、ILOの委員会は、条約・勧告の適用を監視する機関そのものであるので、「監視」という行為が、実際にどのように行われているかを内部から見ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度からの繰り越し課題である、OECDでの聞き取り調査を行うとともに、初期の計画に組み込まれている、ILAスタディーグループでの研究を継続し、昨年度に引き続きILO条約勧告適用専門家委員会での活動を通じて、実際の適用監視を内部から考察する。また、8月に予定されているADB行政裁判所での審理に参加し、国際行政法の成立過程を研究する。また、7月に開催される国際人権規約委員会(自由権規約)を見学し、人権条約機構による規範適用監視の実際を見極め、適用過程がもつ諸問題を研究する。 昨年度に始まった社労士の研究会で、年末に研究報告書をまとめるが、非拘束的な国際規範を、国内的にいかに実施に移すことができるかということが明らかになると思われる。 これらの研究の中から、国連やILOでの各種人権・労働規範、国連ビジネスと人権行動指針、ISO26000、OECDなどのソフトロー的な法的文書が実施監手続きの活動によって、どのように実効的なものになるかを探る。
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Causes of Carryover |
進捗状況のところで述べたように、OECD本部での聞き取り調査を予定していた期間に、別用務(本科研の研究に直接的に関係するILO条約勧告適用専門家委員会の審議)が入ってしまい、次年度に繰り延べざるを得なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り延べた分を利用し、OECDでの聞き取り調査をするとともに、初期計画に予定されているILAビジネスと人権スタディーグループにうおける研究、他の人権条約機構の見聞、国内諸学会への参加及び研究発表を行う。その間適宜、文献を購入する。
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