2015 Fiscal Year Research-status Report
二重の危険の政策的基礎―二重の危険の再構成に向けて―(2)
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15K03170
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 淳 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80318716)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 刑事訴訟法 / 裁判の効力 / 二重の危険 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、「二重の危険の禁止(ないし重複処罰禁止)」に関係する日本・米国・ドイツの文献の収集及び精読を主に行った。そして、その研究成果の一端を第16回早稲田大学英米刑事法研究会での米国連邦最高裁判例の評釈(「誤った『無罪(acquittal)』と二重の危険(Evans v. Michigan, 133 S. Ct. 1069 (2013)」と題する口頭報告)として発表した【未公刊】。Evans判決は、裁判所が犯罪の構成要素ではないものをそうであるものと誤って解釈し、当該要素の存在が証明されていないことを理由に手続を終結させた場合でも、その裁判が二重の危険の観点からする「無罪」と見られる限りはその後の再訴追は禁止されるとの判断を示したものである。この評釈は、同判決につき、二重の危険の政策的基礎や類似の問題にかかる先例の内容等に照らして検討し、これに肯定的な評価を与えたものである。これは、その検討の視点(特に前者)において一定の独自性があり、この問題について初めて直接判断した重要な最高裁判例に対する評釈として重要性も認められよう。また、これは、本研究の目的の一つである「ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎」にかかる問題を直接取り扱うものではないが、本研究のもう一つの目的である「ドイツにおける重複処罰禁止の原則と米国における二重の危険の政策的基礎における共通点及び相違点を抽出し、相違点については相違することとなった原因を明らかにすること」との関係で密接な関連性が認められ、本研究の実施計画を遂行する上でも重要な意味を持つ。 平成27年度においては、日本刑法学会(全国大会【専修大学】)、早稲田大学刑事法学研究会、刑事判例研究会(東京大学)に参加し、日本の刑事手続にかかる判例・実務・学説上の重要な動向を確認したが、このことは、間接的に本研究の推進にもつながっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドイツにおける重複処罰禁止にかかる文献の収集・精読がある程度進んでいるものの、研究成果を公表するにはなお不十分であり、実施計画上は平成28年度において執筆を完了(・公表)することが予定されている「ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎」に関する論文の執筆作業に着手することができていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに文献の収集・精読の作業を進め、今年度中には「ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎」に関する論文の執筆作業に着手し、これを完了する予定である。また、それと同時に、米国における二重の危険の政策的基礎についての研究のフォローアップに努め、ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎との比較の作業の基盤作りに従事する予定である。さらに、平成28年度中に「形式裁判の内容的確定力(拘束力)」に関する判例解説を執筆し、それが『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』に掲載される予定となっている(なお、「拘束力」も少なくとも米国においては「二重の危険」と無縁のものではなく、その意味で本研究の目的とも関連するものといえる)。
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Causes of Carryover |
各費目につき、支出が当初見込んでいたよりも少なかったため(物品費については主としてドイツにおける重複処罰に関する文献の収集、旅費については研究会出席数、印刷等にかかる費用についてはトナーの交換時期(使用量)等との関係でそれぞれ想定と違いが生じたため)。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文献収集を充実させることが重要であると考えられること、旅費については当初予定額を上回る可能性は低いこと、印刷等の費用は(時期が若干見込みと異なっただけで)かかることが見込まれることから、「次年度使用額」は基本的には平成28年度の物品費及び「その他」に組み込み、同年度においては一層ドイツにおける重複処罰禁止にかかる文献の発見・収集に注力し、印刷用紙・トナー等も購入する。なお、もともと平成28年度に支出する予定になっていた物品費、旅費、その他(印刷等にかかる費用)については、いずれも当初の予定通り使用する。
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