2016 Fiscal Year Research-status Report
二重の危険の政策的基礎―二重の危険の再構成に向けて―(2)
Project/Area Number |
15K03170
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 淳 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (80318716)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 裁判の効力 / 二重の危険 / 拘束力 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度においては、引き続き「二重の危険の禁止(ないし重複処罰の禁止)」に関係する日本・米国、ドイツの文献の収集・精読を行った。そして、それと関連する内容にかかる裁判例の解説を執筆・提出した(『刑事訴訟法判例百選〔第10版〕』(有斐閣、2017年5月刊行))。また、それに先行して、平成28年5月に、その内容を含む研究報告(口頭報告)を刑事法総合研究会(名古屋大学)にて行った。これらの解説・報告では、被告人の死亡を前提に裁判所が公訴棄却の判決を宣告した場合でも、後に被告人の生存(死亡偽装)が判明し、同人があらためて起訴された場合には、当該起訴を受けた裁判所は前訴裁判所の被告人死亡の判断に拘束されることなく審理することができるとした大阪地判昭49・5・2刑月6・5・583、判時745・40を分析した。具体的には、前訴裁判所の公訴棄却判決と二重の危険の禁止(以下「二重の危険」という)との関係を検討し、さらに、この問題を「拘束力」の問題として考えた場合に後訴裁判所が採るべき措置にかかる代表的な学説を分析・整理した。なお、口頭報告では、拘束力と二重の危険の関係についても若干言及したが、この点は、上記裁判例に対する先行評釈とは若干異なる切り口を提示するもので、本研究との関係でも意義があるものといえる。 上記に加え、二重の危険に関する新しい米国連邦最高裁判例の簡単な紹介(比較法学51巻1号、2017(予定))も行った。紹介自体はごく簡潔なものであるが、その紹介のために行ったこの判例の精読・分析は、本研究の推進にも役立つものである。 さらに、早稲田大学刑事法学研究会、刑事判例研究会(東京大学)に参加し、日本の刑事手続における判例・実務・学説上の重要な動きを確認したが、この点も間接的には本研究の推進に役立つものといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
ドイツにおける重複処罰の禁止及び米国における二重の危険に関する文献の収集・精読はある程度進んでいるものの、実施計画上は平成28年度中に執筆・公表する予定になっていた「ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎」にかかる論文の執筆が進んでおらず、現時点(平成29年5月現在)でなお公表できていないため。
|
Strategy for Future Research Activity |
さらに文献の収集・精読を進め、平成29年度中には(1)「ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎」にかかる論文の執筆を完了し、(2)「ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎と米国における二重の危険の政策的基礎の比較」にかかる論文の執筆に着手する予定である。
|
Causes of Carryover |
洋書(ドイツ及び米国の文献)の購入にかかる支出額が予定を下回ったほか、学会・研究会出張にかかる支出額が予定を下回った(学会については、平成28年度は本務校が開催校であったとの事情があり、研究会については、体調不良等により参加回数が予定していたよりも少なかったとの事情があった)ことが主たる理由である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に研究の素材となる文献の収集(著書購入のほか、雑誌論文の複写等を含む)に費用を割くべきであること、出張費については予定されている額を上回る額を今年度特に支出することになる可能性は低いこと等に鑑み、「次年度使用額」は基本的には平成29年度の「物品費」及び「その他」に組み込み、特にドイツ及びアメリカの文献の収集に注力するほか、印刷用紙・トナー等の購入に使用する。 なお、もともと平成29年度に支出する予定となっていた「物品費」、「出張費」、「その他」については、当初の予定通り使用する。
|