2017 Fiscal Year Research-status Report
二重の危険の政策的基礎―二重の危険の再構成に向けて―(2)
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15K03170
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
小島 淳 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (80318716)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 裁判の効力 / 公訴事実の同一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、本研究の目的及び実施計画に沿って、①ドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎にかかる文献の探索・精読及び②ドイツにおける重複処罰禁止と米国における二重の危険の禁止の比較にかかる文献の探索・精読を行ったほか、③我が国における二重の危険に関する文献を探索・精読し、「拘束力」に関する裁判例の解説や「公訴事実の同一性」に関係する論文を執筆・公表した。 研究成果として平成29年度中に公表したものとしては、まず「アメリカ合衆国最高裁判所2015年10月開廷期刑事関係判例概観」比較法学51巻1号175頁がある(以下「判例紹介」という)。これは、米国における二重の危険に関する近時の最高裁判例(Puerto Rico v. Sanchez Valle(2016))を簡潔に紹介したものである。また、「形式裁判の内容的確定力」刑事訴訟法判例百選〔第10版〕224‐225頁を公表した(以下「判例解説」という)。これは、我が国における裁判の効力の一つである拘束力に関する特徴的な裁判例を解説したもので、従来の議論状況の整理と新たな視点の提示を含むものである。さらに、「一罪一逮捕一勾留の原則に関する一考察」研修829号3‐18頁を公表した(以下「論文」という)。これは、同原則に関する従来の議論状況を確認した上で新たな整理の仕方を提案するものである。以上の各研究業績は、本研究の目的と直結するテーマを取り扱うものとして(上記「判例紹介」)、あるいは、裁判の効力の一つとして二重の危険とも密接に関連しうるテーマや裁判の効力の及ぶ範囲を画する概念としての「公訴事実の同一性」や「罪数」に深くかかわるテーマを取り扱ったものとして(上記「判例解説」及び「論文」)いずれも本研究の目的を達成するのに必要な下準備となる研究の成果を提示したものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
下準備となる研究はそれなりに進んでいるが、 本研究の中核となるドイツにおける重複処罰禁止の政策的基礎の探究及びそれと米国における二重の危険の政策的基礎の比較にかかる研究の成果がどちらも公表できていない。 必要な文献等の探索・精読になお時間を要するほか、ドイツと米国の制度を比較検討する際の前提となる米国における二重の危険の政策的基礎にかかる研究の取りまとめに時間がかかっていることなどが遅延の主たる理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
さらに必要な文献の探索・精読を進め、平成30年度中にはドイツにおける重複処罰の禁止の政策的基礎に関する論文の執筆を完了する予定である。また(補助期間終了後であるが)平成31年度(2019年度)中にはドイツにおける重複処罰の禁止の政策的基礎と米国における二重の危険の政策的基礎の比較にかかる論文の執筆に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由としては、文献(特に書籍)についての支出がもともと予定していた支出額に満たなかったこと、研究会時の体調不良等により出張旅費が想定していた額に満たなかったことが挙げられる。 次年度使用額については、以下の形で使用することを計画している。(1)二重の危険ないし重複処罰の禁止に関連する国内及び国外の関連書籍(新たに発見ないし発行されたもの)のほか、研究遂行に必要な機器類(メモリースティック等)の購入に使用する(合計35万円)。(2)日本刑法学会や早稲田大学・東京大学において開催される各研究会への出張旅費として使用する(合計25万円)。(3)印刷用紙やトナー等の消耗品の購入に使用する(合計7万5千円)。
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Research Products
(2 results)