2017 Fiscal Year Research-status Report
新たな刑事司法制度における直接主義・当事者主義の意義に関する研究
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15K03173
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堀江 慎司 京都大学, 法学研究科, 教授 (10293854)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 刑事訴訟法 / 当事者主義 / 直接主義 / 取調べの録音録画 / 協議・合意制度 / 証拠の収集・保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、平成28年の刑事訴訟法等の改正により導入された「新たな刑事司法制度」について、その内容及び立法過程の議論を精査するとともに、改正施行後の運用の在り方を検討した。具体的には、主に被疑者取調べの録音録画制度に関し、同制度の下で生成される記録媒体の証拠としての取扱いについて、国内外の文献を収集・参照しつつ、我が国における適切な運用の方向性を探った。また、協議・合意制度に関し、訴因制度ないし裁判所の審判権限をめぐる従来の議論との関係について考察し、同制度が既存の刑事手続の中で整合的に運用されることが可能かを検討した。これらにより、前年度までに行った、「直接主義」や「当事者主義」といった刑事手続の基本理念・基本構造と新制度との関係についての研究をより一層深化させた。これらの研究は、未だ論文等の形で公表するには至っていないものの、早期の研究成果の公表に向けて鋭意準備している。 加えて、新制度の中核をなす取調べ録音録画制度や協議・合意制度が刑事司法システム全体の中でどのように位置づけられるべきかを検討するためには、両制度の下での供述証拠の収集・使用の在り方のみならず、古典的な手段による供述証拠の収集、さらには他の種類の証拠の収集・保全・使用の在り方についても考察する必要があるとの関心のもと、いわゆる余罪取調べの問題や、電磁的記録媒体の収集・保全、電子監視による情報収集といった捜査手段の規律について、国内外の裁判例や文献を素材として研究を行い、その成果を論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画調書に記載の計画のうち、総論的研究すなわち直接主義および当事者主義の意義の解明については、従来の議論の再検討を中心に、概ね順調に実行できている。 各論的研究すなわち平成28年刑訴法等改正における具体的諸制度に関する調査研究については、取調べの録音録画制度及び協議・合意制度を中心に、国内外の文献資料等の収集・分析活動を順調に実行できている。 また、平成28年改正以外にも、本研究課題に関連しうる課題として、各種の捜査手続の規律の在り方について新たに研究を開始し、成果を公表している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、平成28年刑訴法等改正の内容と立法経緯、今後の運用の在り方を具体的に検討する。加えて、平成28年改正以外の研究課題にも積極的に取り組み、その成果と上記検討との接続を試みる。そのため、国内外の関連する文献資料その他の情報の収集・分析に努め、その対象(例えば研究の対象国、研究対象とする諸制度の範囲)を更に拡大することも検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)平成29年度内に納品可能かが不確実な文献資料・機器類の購入を控えたこと、及び他の業務多忙のため渡航を見合わせたことによる。 (使用計画)次年度分として請求した研究費と合わせて、文献資料の購入、その整理・分析および論文執筆に必要な機器の購入、研究会等への参加に要する旅費のために使用する予定である。
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Research Products
(3 results)