2016 Fiscal Year Research-status Report
転換期を迎える民法に対する刑法学―エンフォースメント手段としての刑法という視点で
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15K03174
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
品田 智史 大阪大学, 法学研究科, 准教授 (60542107)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西内 康人 京都大学, 法学研究科, 准教授 (40437182)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 刑法 / 財産犯 / 経済刑法 / 刑法と民法 / 比較法 / 法と経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民法改正に際して、民法と刑法の関係について、民法の財産関係を巡る規律のエンフォースメント手段として、刑法がどのような機能を有しているのか、及び、どのような機能を有していくべきなのかを、その必要性・許容性も含めて検証することを目的とする。本年度は、昨年度抽出した三つの問題領域についての具体的検討を順次開始した。 1.民法改正にあたって、契約関係に関して活発な議論が行われたほか、新たな創設的規定として、約款規制に関する条文が挿入された。他方で、刑法の詐欺罪を巡っては、その具体的処罰範囲の画定のための契約への依存度が増大している。そのような状況を踏まえて、詐欺罪において、(民法だけではなく消費者契約法も含めた)契約に関する私法上の規律が具体的にどのような影響を及ぼすのか、及び、民法改正に伴い、それに変化が生じているのかについて考察した論考を執筆した(平成29年度はじめに公表予定)。 2.詐害行為取消権制度が、倒産法上の制度に近づいたことを受けて、債権回収の場面におけるエンフォースメント状況に変化が生じる可能性がある。その研究の準備段階として、倒産法上の刑事罰の検討を行った。本研究については、研究会で報告し、参加者から助言を受けることができたので。 3.エンフォースメント手段として刑法がどのように機能すべきかという点の実例として、ドイツにおける近時の金融商品取引法罰則改正を研究し、公表した。 4.本研究に関連する民事法上の課題について、研究分担者も業績を公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度抽出した三つの問題点のうち一つについて、公表段階にまで持っていくことができたため、この部分では、当初の予定以上に研究は進捗している。他方で、第三の問題点については、研究の端緒についたばかりであるので、(1)と評価することはしなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、当初の研究計画に従って研究を進めていく。 研究計画の最終年度となる平成29年度は、主として、残された二つの問題点について研究代表者が検討を進め、その結果に対して、対研究分担者が、民法学の観点からの指摘・修正を行う。その際には、アメリカにおいて盛んに議論が行われている法と経済学の観点をも踏まえ、エンフォースメント手段としての刑法の機能について検討する。その際、ドイツ刑法においても、「エンフォースメント手段としての刑法」という視点に基づいた研究が、近時、経済刑法の分野などにおいて登場してきており、その分析も本研究課題に大きな寄与を与えるものと思われる。 また、刑罰によるエンフォースメントを考える場合、実務においてどのように罰則が運用されているのかについての検証も必要不可欠である。そのため、国内の実務家に意見を聞くほか、債権法改正を経たドイツ法における罰則の運用状況、法と経済学が発展しているアメリカにおける実務の運用状況の両方を知ることが必要不可欠であると思われる。
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Causes of Carryover |
購入予定の書籍(ドイツ法の文献等)の出版が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出版が遅れた書籍を購入する。
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