2016 Fiscal Year Research-status Report
刑事過失の認定における実体法と手続法の「連結」の実践的応用
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15K03176
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宇藤 崇 神戸大学, 法学研究科, 教授 (30252943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小田 直樹 神戸大学, 法学研究科, 教授 (10194557)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 刑事過失論 / 刑事事実認定プロセス論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,刑事実体法がその実現を目指す「規範的・政策的な合理性」を,現実の手続を通じて歪みなく実現するために必要となる枠組みを探り,その実践上問題となる課題を抽出し,検討することを目的としたものである.その素材として,実質的に一連の行為からなる,または複数主体に関わる過失犯を検討し,行為の危険性と注意義務の内容を適切に捉える実体法上の方途と,それを刑事手続に適切に反映させるための現実的課題を検討している.初年度に引き続き,それぞれにつき,次のようなアプローチで研究を進めた. (a) 刑事実体法からのアプローチ: いくつかの「下絵」をモデルとして提示する予定であったが,(危険社会型の)組織過失モデル(地位,職責,権限の考慮)を一般化する見方の功罪を評価する必要があるため,先に責任論という視野で,過失犯処罰の「合理性」を確保する論理を整理した。要罰性を行為責任の枠内で扱うのが「注意義務~回避可能性」を核とする帰属論の思考だ(神戸法学論文)が,過失犯では能力問題との融合が生じうる(「引受過失」も視野に入る)ため,統合的予防論・ソフトな決定論を土台とする「機能主義的な語り方」が「合理性」を支えることを確認しつつ,「認定」に繋ぐ議論の必要性を訴えた(浅田古稀論文)。 (b) 刑事手続法からのアプローチ: 前年度までの成果を踏まえた上で,引き続き作業を進めた.とりわけ,これまでの研究で指摘されている「下絵」の考え方の取扱いにつき,刑事実体法からのアプローチにより,これまでに得られた知見を踏まえ,要件事実論,証明構造論が事実認定に果たす役割をより明確にするとともに,(裁判員裁判における)公判前整理手続や審理・評議といった具体的な訴訟プロセスのどの段階で,どのように取り扱うべきかという視点を念頭に入れて検討を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き,関連する内外の基本的文献を収集するとともに,これまでに得られた知見を充実させることができた.また,各種研究会等においても,関連する諸問題についてより深く,また具体的な検討を進めることができた. 以上のところから,平成28年度における研究の進捗は,おおむね順調であったということができる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,本研究の実施最終年度として,それぞれの立場からのアプローチを一層進めるとともに,その成果をまとめ,さらなる研究を進めるために基盤を確認したい.具体的には次のとおり. (a) 刑事実体法からはのアプローチ: これまでに得た知見を事例の具体的な扱いに引きつけて,何が「訴因=罪となるべき事実」として取り上げられるべきか(「下絵」と罪体の区別の在り方)を探ることで,起訴裁量の在り方・法適用者による検討の在り方(訴因変更の要否)について指針となるものを探りたい. (b) 刑事手続法からのアプローチ: 「下絵」に関する研究を踏まえ,実践的応用としてあるべき要件事実論,事実認定論につき一定の指針となるものを描くことを目指す.
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Causes of Carryover |
研究のために予定していた図書の発行時期等が当初の予定から遅れているためである.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
図書等については,平成29年度中の発行が見込まれており,その費用に充当する計画である.
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Research Products
(6 results)
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[Book] ケースブック刑法第3版2017
Author(s)
岩間康夫, 塩見淳, 小田直樹, 橋田久, 髙山佳奈子, 安田拓人, 齊藤彰子, 小島陽介
Total Pages
372頁(69-84,193-205,223-232)
Publisher
有斐閣