2017 Fiscal Year Research-status Report
米国厳罰政策の転換がわが国の少年司法に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
15K03184
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山口 直也 立命館大学, 法務研究科, 教授 (20298392)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 少年法20条 / 少年法55条 / 要保護性 / 刑事処分相当性 / 脳科学 / 少年法適用年齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
1 本年度は、(1)少年刑事裁判における少年法55条移送判断のあり方に関する研究、及び(2)脳科学と少年司法に関する学際的研究を行った。 2 (1)は、少年法20条(55条)の「刑事(保護)処分相当性」の意議を少年審判の対象である「要保護性」の観点から検討し、併せて、少年法55条の保護処分相当性の意議を検察官が関与する「刑事」手続の観点から検討したものである。結論として、少年法20条1項の刑事処分相当性判断と同2項の刑事処分「不」相当性判断は同じ要保護性判断であり、同条の刑事処分(不)相当性判断と法55条の保護処分相当性も同じ要保護性判断に他ならないということ、家庭裁判所及び刑事裁判所で審判の対象となる要保護性の内容のうち、累非行性及び矯正可能性は少年の性格等の主観的要素を中心とした将来予測の判断であり、保護相当性は罪質等の客観的要素を中心とした犯行時の定点判断であるということを明らかにし、学会誌である『刑法雑誌』56巻3号(2017年6月)に公表した。 3 (2)は、脳科学・神経科学の新たな知見がもたらした「子ども(=少年)の再発見」について米国連邦最高裁判決の射程を踏まえて、脳科学、社会学、刑事法学、刑事裁判実務の観点から学際的に共同研究を行ったものである。結論として、少年に対する刑の減軽、刑罰回避の拡大、少年保護年齢の拡張など、既存の厳罰化の方向から少年保護の方向に舵を切り直した米国少年司法の実務は、少年法適用年齢を引き下げるなど未だに厳罰化の傾向を強めるわが国の少年司法に与える影響は小さくないことを明らかにした。これらの成果については、学会誌である『犯罪社会学研究』42号(2017年10月)に公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度中に前年度の学会報告の成果を深めて共同研究として学会誌に公表するなど、研究は当該の計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、本課題研究の総括の年にあたることから、過年度の研究成果の集大成を目指している。具体的には、脳科学者、心理学者、法学者、臨床心理学者、裁判実務家による学際的・総合的研究の成果を『脳科学と少年司法』として出版することを予定している。
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Research Products
(5 results)