2015 Fiscal Year Research-status Report
変動する物的担保法制の現状分析と将来的展望:日仏間の比較法的検証を通じて
Project/Area Number |
15K03196
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
今村 与一 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (30160063)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 人的担保 / 保証契約の要式化 / 物的担保との併用 / 不動産概念 / 有体物主義 / 無体財産の優勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランス法に関する新たな知見としては、企業金融において不動産担保の占める比重が、以前から必ずしも大きくなかったうえ、不動産執行手続に固有の問題点(租税債権や労働債権の抵当権に対する優先、差押換価手続の不効率など)を回避するため、人的担保への傾斜を強めたとの指摘が注目される。実際、日本の事業者向けの金融では、一貫して個人・法人両方の保証契約が活用されてきたが、だからといって物的担保が不要とされることはなかった。物的担保の設定を不可欠の前提として、さらに人的担保を徴求し、執行妨害ほか債務者の責任逃れの道を封じる方策が幾重にも講じられたのであった。この点に着目するならば、フランス法における人的担保の隆盛は、その社会的土壌を異にするように思われる。 保証契約が、日本法の母法に当たるフランス法でも、もともと純然たる諾成契約とされながら、個人保証に関しては、1980年代の判例、次いで、1989年、2003年の二度にわたる立法措置により、要式契約化され、再び現在では、要式性の緩和を求める取引界の要請が働くようになっている。こうした動向は、研究対象を物的担保法制に限定する場合でも、フランス法独自の人的担保法の歩みと両にらみで観察する必要があることを教えてくれる。 その人的担保に関しては、日本の債権法改正との関連でフランス法の歩みを概括しようと思い立ち、公表に向けての準備中である。物的担保法の中心に位置する不動産の概念については、昨年度中に研究成果を明らかにした。フランス物的担保法制の動向については、本年9月をめどにして昨年度から準備を重ねている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
行政職に伴う業務量の著増、とりわけ法科大学院関係の対応に追われ、この1年間は、文献・資料の収集に見合った研究時間を確保することができなかった。このため、今日でも商人破産主義を維持するフランス倒産法制、2006年の法改正後ちょうど10周年を迎えた不動産執行手続に対する現時点での評価など、未着手の課題は多い。 若手研究者との研究交流は、昨年度の計画に盛り込まれていたが、結局のところ、実現には至っていない。当方のみならず、呼びかけたい若手研究者も繁忙の最中にあったからである。この取り組みについては、本年度に持ち越さざるをえない。
|
Strategy for Future Research Activity |
さしあたりは、研究対象を個人保証に限定し、人的担保に関する日本法とフランス法の異同を明らかにした当面の成果を公表したい。この研究成果の上に、フランス物的担保法制の最新動向を分析した研究成果をまとめたい。 フランス物的担保法制に関する研究会は、本年9月までに実施を予定している。そこでの検討結果を反映させた研究成果をまとめることができればと考える。 これら文献・資料にもとづく研究成果をもとにして、本年度末(来年2月または3月中)までにフランスでの実態調査を行う。その調査項目については、上記の研究会参加者にも意見を求め、多角的な視点から担保取引の実態を把握するように努めたい。
|
Causes of Carryover |
フランス物的担保法制に関する研究会を前年度中に実施することができなかったことによる。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に持ち越しとなった研究会は、9月までの夏休み中に実施予定である。
|
Research Products
(1 results)