2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K03200
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮本 誠子 金沢大学, 法学系, 准教授 (00540155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民法 / 相続 / フランス法 / 遺産共有 / 財産管理 / 遺産分割 / 夫婦財産制 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、(1)準備的作業として、フランス法における夫婦財産制の解消と相続との関連を検討し、遺産分割での財産分配のために実際にどのような計算がなされているのかを明らかにした。研究成果の一部は、日本弁護士連合会・法制審議会民法(相続関係)部会バックアップ会議「フランスの相続法制に関する勉強会」において「フランスの相続法制について」と題する報告をした際に紹介し(2015年9月7日)、実際の計算方法の一例は、「フランス法における夫婦財産制解消及び遺産分割の一例」金沢法学58巻2号(2016年3月)73~87頁において示した。これらの過程で、特に生存配偶者の居所の使用や、生存配偶者に認められた居所の優先的割当て制度について理解を進めることもできた。 (2)(1)により日本法の特徴や問題点もより明らかになってきた。研究成果の一部は、「具体的相続分が抱える問題」水野紀子編著『相続法の立法的課題』(有斐閣、2016年2月)114~130頁において公表し、日本法の相続法の理解を困難にしている概念の1つが「具体的相続分」であり、その内容や計算方法はあいまいで、それは遺産分割との関連性が不明確であることに起因するという問題提起をした。また、日本での夫婦財産制、夫婦間の財産のあり方、離婚時と死亡時の相違、相続における財産分配との関連、法制審議会における議論等を、フランスの大学で口頭により紹介した(《La reforme du droit des successions au Japon》, 19 fevrier 2016, Universite de Toulouse 1 Capitole)。(1)の作業を踏まえてフランス法を念頭に置きながら、日本法における理論の矛盾や、公証人実務の欠如等にも言及し、フランスの研究者らとの質疑応答もおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランス法における夫婦財産制の解消と遺産分割との関連を検討することにより、生存配偶者保護に関する制度(夫婦財産制の活用、居所の保護、遺産分割での先取り)に関する理解を進めることができ、研究の過程で日本法の特徴や問題点もつかんだ。また、渡仏の際には、必要な文献を収集することができ、フランスの家族法研究者との質疑応答を通じて、次年度以降の研究に活用できる結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
フランス相続法において、家族間の権利義務関係を明確にするための制度がどのようなものであり、相続法の体系の中でどのように位置づけられているのかという研究を進める。例えば、生存配偶者を保護する制度として、居所の一時的保護制度や、遺産分割における優先的割当て制度があるが、今年度の研究により、これらを理解するためには夫婦財産制や贈与・遺贈に関する理解をより深めることも必要だと予想しており、このような作業も並行して進める。
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