2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K03200
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
宮本 誠子 金沢大学, 法学系, 准教授 (00540155)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民法 / 相続 / フランス法 / 遺産共有 / 財産管理 / 遺産分割 / 夫婦財産制 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度末に、預貯金債権の遺産分割対象性に関する事件が大法廷に回付されたことから、今年度は、預貯金債権の相続のあり方に注目が集まっていたため、本研究においても、遺産共有中の財産管理(遺産管理)に関する検討を、預貯金債権の相続に関連づけながら進めた。そして、預貯金債権の相続に関する近時の最高裁判例や学説は、遺産共有の法的性質論との関連では、合有説に親和的な方向を示していることを示し(「遺産共有」法学教室429号(2016年6月)44~48頁)、また、最高裁判例には遺産管理の考え方が現れつつあるのではないかと指摘した(口頭報告:「金銭債権の遺産分割対象化と、遺産共有中の権利行使及び遺産管理―近時の最高裁判決からみて-」(会議名:家族法フォーラム、2016年7月開催)。 遺産共有中の財産管理(遺産管理)に関する検討は、フランス法についても、遺産を構成する財産の管理についての細かな規定を分析するという方法でおこなった。そして、フランス法では、「遺産」を独立した財産体とみており、「遺産」を基軸に、遺産共有中の権利義務関係の変動や遺産分割の対象財産を明らかにしているとの結論を得た(「フランス法における遺産管理と『遺産』概念」社会科学研究68巻2号(2017年4月)5~24頁)。 フランス相続法における、家族間の権利義務関係を明確にするための制度に関する研究も継続している。研究成果の一部である「フランス法における『相続財産の負担』」阪大法学66巻3・4号(2016年11月)747~767頁)では、被相続人の死後の事務に関連する「相続財産の負担」概念を、法制審議会での預貯金債権の相続に関する議論と関連づけながら検討し、相続法体系の中に位置づけ、死後の事務に関する費用が相続の場面で清算されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
法制審議会での相続法改正に向けた議論や預貯金債権の相続に関する大法廷判決を受けて、今年度の研究は、遺産管理を中心としたものにした。そのため、もともと今年度に予定していた、家族間の権利義務関係を明確にするための制度に関する研究は、それほど大きく進めることはできなかったが、遺産管理に関する研究を、今年度内に予定より大きく進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
フランス相続法において、家族間の権利義務関係を明確にするための制度がどのようなものであり、相続法の体系の中でどのように位置づけられているのかという研究を進める。法制審議会での相続法改正に向けた議論の内容も注視しながら、日本において、家族間における権利義務関係を相続の場面に取り入れる可能性も検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は、年度末に渡仏して、フランス相続法において、家族間の権利義務関係を明確にするための制度がどのようなものであり、相続法の体系の中でどのように位置づけられているのかにつき、資料収集をし、また、フランスの教授・准教授等からアドバイスをいただきたいと考えていた。しかし、今年度の研究は、法制審議会での相続法改正に向けた議論や預貯金債権の相続に関する大法廷判決を受けて、遺産管理を中心としたものにし、家族間の権利義務関係を明確にするための制度に関する研究は、次年度に実施することにした。これを受けて、渡仏を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記理由により、今年度の旅費の一部を、次年度に使用することにした。次年度は本研究の最終年度であるため、渡仏しての資料収集などは、平成29年度の前半を予定している。
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