2016 Fiscal Year Research-status Report
民法における「能力」概念の比較法的研究―東アジアを中心に
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15K03201
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
宮下 修一 中央大学, 法務研究科, 教授 (80377712)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朱 曄 静岡大学, 地域法実務実践センター, 教授 (30435945)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 民事法学 / 民法 / 消費者法 / 能力 / 意思能力 / 事理弁識能力 / 行為能力 / 責任能力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、3か年計画の研究の第2年度にあたるため、研究課題に関する比較法的な研究を本格化することにした。そこで、比較対象国のうち、まずは「能力」概念について日本と近似した法制度を採用している韓国及び台湾(中華民国)から同概念に詳しい研究者を計3名(韓国2名・台湾1名)招聘するとともに、日本国内の大学に所属し、各種の「能力」概念に精通する研究者4名(うち1名は中国出身で日中比較を担当)にも報告を依頼し、2017年2月5日に研究代表者の所属先である中央大学市ヶ谷キャンパスにおいて、中央大学日本比較法研究所の支援を受け、国際セミナー「民法における『能力』概念の比較法的考察」を開催した。当日は、報告者及び参加した国内外の研究者・実務家の間で活発な議論が行われた。当日の成果については、来年度、学内の紀要等で公表する予定である。 また、研究代表者の宮下は、本年度も国内における「能力」概念に関する議論をふまえて、前年度に引き続き適合性原則に関する論文を執筆するとともに、行為能力制度の対象となる若年者の年齢引下げをめぐる動きに関連して新たな法制度の創設を提唱する論文や消費者契約法の改正を通して「能力」概念制度の狭間に置かれた者を保護する必要性を説く論文等も執筆し、さらに、行為能力制度に関連し、他領域の研究者や実務家との共編著で認知症ケアの倫理と法に関する書籍も刊行した。さらに、宮下は、2016年5月28日に開催された日本成年後見法学会第13回学術大会において、障害者権利条約の批准や成年後見利用促進法の制定を受けて、行為能力制度を前提とした現行の成年後見制度の問題点と克服すべき課題につき、指定討論者としてコメントを行った。 このほか、宮下は韓国の亜洲大学校に招聘され、また、研究分担者の朱曄は台湾の台湾大学を訪問し、本年度のみならず、来年度以降の研究の方向性についても精力的に調整を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、「研究実績の概要」で述べたように、昨年度の研究代表者である宮下がわが国における議論状況の調査・把握を踏まえて論文の公表を続けるとともに、韓国及び台湾(中華民国)から本研究テーマに関する造詣の深い一線級の研究者とわが国で能力概念に精通した研究者が一堂に会する国際セミナーを開催することによって、研究を深化させることができた。また、これも「研究実績の概要」で述べたように、研究代表者である宮下は韓国を、さらに研究分担者である朱は台湾をそれぞれ訪問し、現地における議論状況を調査・把握するとともに、上記の国際セミナーの実施のみならず、来年度以降の研究のあり方についても意見交換を行った。 以上のように、昨年度、宮下が大学を移籍することによって本年度に持ち越しとなった研究を着実に実施できたことから、「おおむね順調に進展している」と評価することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、3年計画の研究最終年度に当たるため、研究成果のとりまとめに向けた作業を行う。 まずは、比較法研究の対象国である3か国のうち、昨年度は予算の関係もあって来日を要請できなかった中国の研究者を招聘し、国際セミナーを開催する予定である。また、予算の許す範囲で、台湾や韓国の研究者を再び招聘して国際セミナーを開催することも検討する。いずれも、研究代表者及び研究分担者が、現地調査を含めた事前準備を行い、連携研究者及び研究協力者との協議を踏まえて実施する予定である。 次に、昨年度実施した国際セミナーの成果を紀要等で公表する準備を進める。また、これまでの国内外における研究成果を踏まえ、引き続き論文を公表するとともに、研究代表者が研究分担者・連携研究者・研究協力者と協議を重ねて研究のとりまとめに向けた作業を行う。
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Causes of Carryover |
2017年2月の国際セミナーの開催に際して、国外の研究者を3名招聘するために必要な予算を確保しておいたが、航空運賃が想定よりも安価で済み、また、先方の都合で予定した日本滞在日程を短縮したこともあり、その分の差額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も、国外の研究者を招聘する予定であるため、その際の旅費・滞在費用として使用する予定である。なお、次年度使用額が生じたため、招聘の人数の増加等も検討する。
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