2017 Fiscal Year Research-status Report
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15K03207
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
洪 済植 島根大学, 法務研究科, 教授 (10382590)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 親会社等の経営責任 / 支配株主 / 持株会社 / 親会社 / 子会社 / 少数派株主 / 忠実義務 / 公開義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においては、科研課題に関する情報を収集し分析検討を行い、その研究成果として、「親会社等の経営責任」(島大法学61巻3・4号79-140頁(2018年3月))に関する学術論文を公表した。 本稿は、会社法上、会社経営の担い手である取締役等以外の者による会社経営への関与行為がある場合において、とりわけ持株会社制度を利用した企業グループにおける「親会社等の経営責任」について、アメリカ法における支配株主の権限濫用行為と経営責任に関する判例・学説を概観し、日本法への示唆を得ることに意義がある。 前述のように、企業グループにおいて、会社経営の合理性および透明性を高めるとともに、グループ経営の健全性を確保するためには、グループ傘下子会社の取締役等による会社の組織・運営・管理に対し、事実上の支配的影響力を有する親会社等の私利を図る取引を規制し、かつその法的責任を追及できる法制度に関する立法化を図る必要があると考える。 そこで、本稿では、企業グループにおいて、傘下子会社の取締役等ではないにもかかわらず、かかる取締役等への事実上の支配的影響力を行使して子会社経営を実質的に主宰し、子会社経営に関与する親会社等の責任に関する法的諸問題について分析・検討を行った。 本稿では、まず、その比較検討の対象として、アメリカにおける支配株主の権限濫用行為を規制し、その責任を追及する判例法上の一般法理として機能する支配株主の忠実義務に関する重要判例(会社機会の奪取等)を中心に検討を行った。その上で、日本において、判例法上、親会社等による利益侵害行為から取引相手方の利益を保護する法理として機能する「事実上の取締役の責任」についての従来の下級審裁判例を分析・考察し、私見として、日米における親会社等による経営関与行為とその責任に関する判例・学説の比較的考察から得られた立法論上の問題点について提起した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本件課題である「親会社の法的規制と企業開示制度」の研究推進計画に基づき、平成29年度では、アメリカの支配株主の利益侵害行為を規制し、子会社または少数派株主の利益の保護を図る判例法理として機能する「支配株主の忠実義務」に関する重要判例を分析・検討し、日本法との異なる法制度上の問題点を明らかにしたうえ、立法論上の問題を提起する学術論文を公表することによって、研究成果を得ることができたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、科研課題のうち、独立取締役制度、親子会社の不公正取引に関する判例研究、イギリスの影の取締役、韓国の業務執行人指図人に関する研究資料を収集し、分析・検討することにより、日本法への示唆を得ることを目的とする。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、科研課題に関する研究計画およびその研究資料収集、調査において、研究・教育だけでなく、その他の学務等においても忙しい時期であったので、29年度の研究予定額を次年度に移行せざるを得なかったためである。 次年度の使用額として、科研課題に関する国内および国外における情報収集、研究調査、研究発表等に支出する予定である。
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