2015 Fiscal Year Research-status Report
日本型企業システムにおける監査役の役割-監査委員・監査等委員との対比
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15K03209
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西山 芳喜 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (70109635)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 監査役 / 監査役会 / 監査委員会 / 監査等委員会 / 業務監査 / コーポレート・ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、株式会社における監査役および監査役会・監査委員会・監査等委員会の各業務監査機関の立ち位置とその職務権限の関係を明らかにすることを通じて、各制度の特質を検証しようとするものであるが、本年度は、研究実施計画に従い、会社法の下における株式会社の各類型(監査役(会)設置会社、指名委員会等設置会社、監査等委員会設置会社)の機能・特質を基盤として、監査役等の任務とされる「監査(業務監査)」とその役割について、法構造の特質を分析検討するとともに、その立法史的考察を行った。 その成果の一部は、「監査役会制度の卓越性-大企業における監視と是正の機関として-」(単著、月刊監査役(公益社団法人日本監査役協会)644号18頁~33頁、2015年9月25日発行)として公刊している。この論考では、上記の3類型の機関について、どの類型であってもほぼ同等の規制を受ける大企業を検討の対象とし、法解釈の検討のみならず、実証的な検討をふまえて、監査役会・監査委員会社・監査等委員会の任務である「監査」の職務内容として、「監視」と「是正」という要素を抽出し、その機能評価の視点から、各機関の有用性・実効性について比較検討を試みた。その結果、一応の結論として、監査役会制度の卓越性を評価するに至っている。このような推論は、わが国における類似の研究にはみられない独自の視点からの研究成果といえよう。また、コーポレート・ガバナンスに関する従来のアメリカ型企業システムの優位性を前提とする議論と異なり、日本型企業システムの社会・経済的特質をふまえ検討により、これらとは一線を画するものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従前の準備をふまえ、本年度の前半に本研究の基盤となる研究をとりまとめ、論考として公表できたからである。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、本年度の研究をふまえて、明治32年商法制定以降の監査役制度の立法的背景を探り、制度の淵源を解明する。とりわけ、昭和25年商法改正によって改変された監査役制度を旧に復した昭和49年商法改正時に焦点を当てて研究する。「取締役の職務執行の監査」という新観念の採用と「適法性監査」の理論の形成の背景を探る。また、平成14年商法改正による委員会等設置会社の創設、また、平成26年会社法改正による監査等委員会設置会社の創設に焦点を置き、両委員会設置会社における監査委員会・監査等委員会の創設の背景を探ることを通じて、日本型コーポレート・ガバナンスのあり方を模索する。また併せて、先進諸国において、業務執行役員を監督すべき非業務執行・独立役員の現状と課題に関する比較法的研究にも取り組む。さらに、引き続き、実証的研究として、改正法施行後の監査等委員会設置会社をはじめとする各会社類型の動向を確認・検証する。
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Research Products
(5 results)